
既存の業界はなぜ破壊されるのか
ある研修で、入社3年目の20代の方が私に話しかけてきました。「今日の頭の使い方は普段と全く違います。普段は目の前のことを処理していれば一日、一週間、一ヶ月、一年が終わります。仕事は今年も昨年と大きくは変わらないとはいえ、何の成長もないですね。こんな仕事のスタイルは危険だと思いました。」
この人は異業種連携セミナーに参加した伝統的な産業の大企業の若手社員です。当然仕事も生活もなんの不安もありません。しかし「個人、組織としてこのままでは終わらない。どこからか今の業界自体が破壊される気がする。」といった未来に対しての危機感の表れだと思います。
今回のコラムでは、一見安定した「既存業界」という枠組みがいかにリスクあるものなのかを論じます。
■「業界縦割」の行き詰まり
そもそも既存の業界区分は何が起点になっているのでしょうか。それぞれ業界によって異なりますが、多くは戦前から行われている業界の規制、監督官庁の管理、監視の単位に基づいているのです。鉄鋼業界、セメント業界、自動車業界、コンピュータ業界など、監督官庁が規制、業法を決め、また生産量、出荷高などの統計調査を行うための区分であり、また業界の企業がまとまって政府に要求を出したり、交渉したりするための組織区分です。
しかし、こういった区分は顧客にはあまり関係ありません。売り手側、政府が管理するための区分で、しかもほとんどの区分が、古いバリューチェーンを基本にしたワンウェイ型、つまり企業から顧客へ一方向にモノや情報が流れる形が基本です。
顧客は、既存の業界の単位を根拠に製品やサービスを選んでいるわけではなく、B2Bであればビジネス戦略上の課題を解決できるか、最終消費者であればライフスタイルや価値観を実現できるか、つまり戦略や価値観といった統合的な視点で選択し、購買、使用しているはずです。
読者の皆さんも多くの経験があるはずです。インターネット回線を引こうと思ったら「回線契約は当社ですが、モデムは買ってきてください。セットアップはまた別の会社になりますから・・・」といったケースです。インターネット回線を引くのに半日近く、2つ以上の業者を待たなければなりません。
ネット時代では過去の業界区分は全く意味がありません。古い業界のほとんどはワンウェイ型です。しかしインターネットをベースとしたビジネスのほとんどは双方向または一回アクセスすると複数のサービスに自動アクセスするマルチアクセス型のビジネスモデルとそのためのプラットフォームが基本になっています。
スマートフォンを多用する消費者は、双方向型やマルチアクセス型のサービスを経験しているため、古くからの業界単位でしかもワンウェイ型のサービス対応はドンドン避けていく傾向にあると思います。
もし業界、会社が、古くからの単位を守り、しかもワンウェイ型だとすると、相当に気をつけなければ、組織もそこにいる個人も成長することは難しいと思われます。
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