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大学生から自分自身の課題を見出す

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

■独自の発想と表現方法で 

大学の非常勤講師としてコンセプト企画を教える場をいただいて早6年目。毎年7月に入ると試験期間があり、4月から授業に参加してくれた学生の皆さんの学んだ成果を評価しなければなりません。私の授業では試験は行わず、各自で好きなものについて企画書を作成してもらいます。企画のテーマは新しい発想のラーメン屋さんでも自分が乗りたい車でも、好きなものでよいのです。ここ2、3年は、スマートフォンの普及もあって、アプリケーションソフトの企画が多く見られます。

 企画書の作成には、授業で学んだ、タウンウォッチングやユーザーヒアリング、ネットやドキュメント調査を行うコンセプトメイク手法を使用します。文章による構成だけでなく、コラージュでコンセプトイメージを表現したり、スケッチやコピーライティングも行ったりします。また、提出物は企画書に限らず、作品でも受け付けています。例えば、何かの製品試作、音楽の作曲、アプリケーションソフトなどです。昨年もスマートフォンのアプリを自分でプログラムしてプレゼンしてくれたり、「雨の日の靴カバー」なるものを一生懸命ミシンで作ってもってきてくれたりする学生もいました。学生自身で考えたコンセプトは、各自の得意な表現方法を選んでもらうようにしています。例えば、スケッチをしてみたかったら、少しぐらい下手でもいいからやってみるよう勧めています。

物事を分析することからインテグレートすることへ

 大学ですから、学問を体系的に学ぶことは大変重要です。専門知識を学び、その知識で物事を分析するといったことです。しかし現代社会では、それと同じぐらい大事なのが、様々な要素を独自の視点でインテグレートすることです。それをコンセプトメイクと呼び、授業で体験的に学んでもらっています。実際に体験してみないとその面白さは解りません。

 ここで大切なのは、自分のオリジナルの視点、考え方、発想です。「自分オリジナルで」と言われて悩む学生もいます。高校までの学習でオリジナリティをそれほど求められてこなかったためです。そんな時に学生にアドバイスすることは、次の3つです。

 1.本当にやってみたいことは何か?

 2.他人に負けない自分の強みは何か?

 3.時間を忘れて没頭することは何か?

そこからふと浮かんだことをテーマにして、独自のコンセプトを集中的に考えることを勧めています。あまり深刻に考えず気楽に考えて企画してみることが大事です。

 学生の皆さんからはたくさんのユニークなアイデアが出てきます。「森の中のカフェ」「レディース回転寿司」「髭剃りトリミングサロン」「グローバルカフェ」など、実現性はさておき、様々な夢が飛び出してきます。評価する側もワクワクします。

 初めはアイデア(仮説)から始まり、そのアイデアを膨らませる材料をタウンウォッチングやヒアリングなどの情報収集手法を活用して膨らませていきます。中には、数日間かかりっきりで考える方もいます。そうした内的な思考時間を通して、独自のコンセプトが出来上がっていきます。

今の時代はイノベーションが大事。それは自分の内側から湧き出る

 若い時代に思い切り自由に自分のオリジナルな考え、発想を表現する訓練を積むことは、後々社会人になって仕事や生活をする上で大変重要な体験です。なぜなら、今の時代を楽しく生き抜くためには、様々な制約条件を乗り越える創造性、つまりイノベーションが必要だからです。そのイノベーションの源は、自身の内部にあります。自分の着想、つまりインスピレーションに従って何かを統合(シンセス)し、物事を創造することは、広く社会や産業、製品・サービスのイノベーションの原点になります。

 実際に、授業を通じて新しく何かを創造することに目覚める学生も少なくありません。「初めてコンセプト企画をやってみたが、こういった新しいものを生み出す仕事をしたい」と考え、メーカーの製品企画職、広告宣伝、ベンチャー企業、デザインなどのクリエイティブな仕事に就く学生も何人かいました。彼らが社会、産業、企業でイノベーションを巻き起こしていく原動力になることを期待しています。

 もちろん、会社の中で企画を通すためには、困難が山積みです。しかし、クリエイトすることが好きで楽しみを持つことができれば、そういった困難を超えられます。その原体験を大学生という人生の大事な時期に体験してほしいのです。

創造性を上げるにはどうするか

 さて、大学生に創造性の重要さについて授業で偉そうなことを語っているのですが、私自身もイノベーションを起こすために創造性を絶えず磨いていかなければなりません。ここで私が意識して日々実践していることを少し紹介したいと思います。

1.創造性のマインドセット

制約条件だらけの難しい仕事に取り組む時も、ポジティブサイドに集中力を効かせ、「あっと言わせる打開策、アイデアが見いだせるはずだ」というマインドセットをキープすることで、周りから何と言われようと気にしないよう心掛けています。そうすることで、変化を起こすことができるはずと信じるようにしています。

2.五感を駆使して現場を体感する

 ネットの情報を見たり本で読んだりしただけで理解したつもりにならず、実際に現場に行くようにしています。現場を観察し、また現場の方々と一緒に仕事をするなどして、自分の五感で体感して、そこから発想することができるように、とにかく時間のある限りは行動し感覚でとらえることを大事にしています。

3.失敗を恐れない。失敗するぐらいの挑戦をする

 世間体のよい大学に入る、一流企業で仕事をするというように、人はだんだん失敗を避けるようになります。失敗をしなくなる代わりに、挑戦もしなくなります。これではダメです。大小の失敗を常に経験することで、そこから沢山のことが学べます。失敗を楽しめなければなりません。

4.枠組み、本質から考え直す

 目先のことを変えて満足しない。物事の枠組み、本質的なことから考え直してみるようにしています。そもそもそれは何のためやるのか?それを行う理念は何か?など根本的なことから問い直すことが大事だと思います。これは一見遠回りの様に思えますが、大事なことは物事の本質や原理から考え直すことだと思います。フィロソフィーから考える思考訓練をしておくことが大事です。

5.立場を変えて物事を考える

 顧客として製品やサービスを体験してみる。自分で買ってみる、使ってみる。高齢者と一緒に時間を過ごし、彼らの立場から考えてみる。学生と遊びに行って学生の気持ちになってみる。子供と一緒に遊ぶ。自分と異なる年齢、立場の人と時空間を共有することで、新しいビジョンが得られ、発想の幅が広がります。

6.ネットワークをつくる

 独自の発想が重要と先に述べましたが、独自性とは他人との違いを認識し、周りからの刺激を受けることで自覚されるものです。したがって、常に創造性を引き出してくれるネットワークをつくることが大事です。どれだけ信頼できるネットワークをつくれるかがポイントです。信頼関係が築けていればいろんなことが聞けますし、アイデアももらえます。

7.リズムとテンポを大事にする

 アイデアや独自性はその人の内面からつくり出されます。目に見えないものですが、思考する際のリズムやテンポは極めて大事だと思います。がんじがらめのルール、ネガティブな意見、ことさらに細かい指摘は思考の雑音です。創造性にはそれぞれの人が持つリズムとテンポといった音楽的な要素がとても重要です。

 私自身これらのすべてが出来ているわけではありませんが、日頃からかなりこだわりをもって仕事をし、生活しています。毎年学生たちと週に一度90分という時間をともにして、学生の皆さんが週を追うごとに自分の考えたアイデアに対する集中力が上がっていく様子をみていると、私自身も大変良い刺激を受けます。もしかしたら、最も学習させてもらっているのは私かもしれません。

 

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