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IoT(Internet of Things)時代にこそ技術の原点に戻って考えること

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

そもそも技術とは何か

 ここ数年、電機、機械などかつて世界をリードした日本の製造業に関して、「技術で勝ってビジネスモデルで負ける」「技術にばかり目がいって視野が狭くなり競争に負ける」といったタイトルの書籍や記事が多くみられます。技術に力を入れてきたことがむしろマイナスに働いていたかのように感じさせる表現です。

 しかし現実を見ると、製品・サービスを維持発展させていくには、日本企業に限らず緻密で重層構造の技術体系の保有とその運用、発展が必須であり、ビジネスにとって技術は依然重要な役割を持っています。一般的にはビジネスモデル戦略成功のシンボルのように考えられているGoogleも、情報通信技術では常に世界の最先端を追いかけるため、世界中から優秀な研究者、エンジニアを集め、技術開発に莫大な投資を続けています。

 民間企業に限らず、情報通信、交通運輸、防災、医療などの社会基盤も、高度な技術そのものによって支えられていると言えます。年を追うごとに使用者側の生活や仕事は便利で快適になっていますが、それを支える技術はより高度で複雑化しているのです。

 普段何気なく使っている「技術」という言葉ですが、ここで改めて“技術とは何か”を考えてみたいと思います。

 技術に関係する言葉はいろいろあります。「科学」「科学技術」という言葉や、技術そのものについても「要素技術」「設計技術」「製造技術」「物流技術」「運用技術」「保守技術」など細分化した言葉があります。技術の周辺には「技能」「スキル」「工学」といった表現もあります。技術に関連する言葉は、時代や使う人によって微妙に異なります。この機会に、技術に関連した言葉の定義を確認したいと思います。いくつかの書籍を参照してみると、おおよそ以下のように定義されています。

①  科学とは

   自然界に存在するもの、または既に存在するものの現象のメカニズムを解明すること。基本的に反証可能性、つまり検証されようとしている仮説が実験や観察によって反証される必要がある。16世紀の哲学者デカルトが「方法論序説」で著した ①真実の発見 ②部分への細分化 ③全体の再構築 ④検証 といった真実の追求が原点となり発展した。

②  技術とは

  ある目的を達成させるための新たな原理を見つけ出し、繰り返し再現できるシステムを構築すること。価値を生み出すシステムの原理、仕組みともいえる。科学的な現象をうまく制御し、目的とする成果を達成させる仕組み、プログラムを創造する。したがって、技術にはその対象と目的、目標が存在する。

  技術は必ずしも科学的なものがベースとなり生み出されるとは限らない。科学的な発見よりも先に技術が存在する場合もある。人間が古代発明した道具や機器は、科学的な発明を前提にしたものではない。また、技術によって新たに科学的な発見がもたらされることもある。現代の生命科学、宇宙科学などすべての科学分野は、技術による分析機器の発展によって解明されたものが多い。

 「技術」は具体的に、製品・サービスの基本機能を複数の技術で構想する「設計技術」「設計」で構想された機能を実現させるための個別の「要素技術」、設計でモデル化されたものを実際につくる「製造技術」、つくられたものを使いこなし性能を引きだす「運用技術」に展開される。

技術の範囲

◇設計技術

  ある領域の特定の目的を達成させるために、複数の技術を組み合わせ、調整し、機能させること。標準的な技術やコンポーネントを組み合わせる場合もあれば、独自のものを設計、開発することもある。長期の技術開発が必要な場合もある。対象領域に関する専門的な情報、知識と、そこで必要とされる技術に関する知識を持つことが重要である。

◇要素技術

  一つの設計を完成させるため、いくつかの構成技術が必要となる。その構成技術を要素技術と呼ぶ。新しい要素技術が必要な場合は、要素技術開発を行う。この要素技術が新しい原理に基づくものであれば、基本特許を取得して他者を排除することができる。設計に先立って新しい要素技術を開発することを「先行技術開発」と呼び、研究開発部門が担当することが多い。

◇製造技術

  設計されたものをつくるため、そのつくり方である生産方法と、実際につくる手順である生産工程を明確にし、求められる品質とコストでいかに効率よくつくるかを計画、実行すること。新規性の高いモノや、より高い品質、コスト目標を達成するために、絶えず新たな設備設計と生産の仕組みに関する技術開発が求められる。

◇運用技術

  利用者として目的を達成させるために、つくり出されたモノを活用し、モノの性能を発揮させるために必要な知識やスキル。モノの保守、メンテナンス、廃棄、買い替えなども含まれる。モノを創りだした「設計技術」「製造技術」に関する知識が必要な場合も多く、利用者とモノの作り手が協同して利用技術を開発することも多い。

③  工学とは

  技術によってつくり出された人工物を科学的に分析し、学問として体系化すること、もしくは、科学によって発見された現象を使って人工物をつくり出す技術をつくりだし、学問として体系化すること。

④  技能とは

  技術を実行する際に必要な、スキルやノウハウなどの能力。人が経験的に習得する対象である。ただし、形式知として記録し伝承できる部分もある。たとえば、生産技術があってもそれを技能で実現させられなければ、製品はできない。

 

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