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将来食っていける仕事とは何か?

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

  今週2014年12月22日号の日経ビジネスの特集は「ものづくりの未来を変える GEの破壊力」で、米国ゼネラル・エレクトリックがインダストリアルインターネットというビジョンを掲げ、ビックデータ時代に、過去のものづくりからサービスビジネス化への変革を進めている様子が取材されています。そのためにGEは経営理念を変え、「ファストワークス」という名前のプログラムを実施し、ベンチャーマインドと行動を社員に植え付けようとしています。

 最近、「IoT(Internet of Things)、人やコンピュータ、スマートフォンだけでなく、すべてのモノがインターネットにつながる時代の本格到来」と盛んにいわれており、クラウド化、ビックデータ化が本格的に進み始めています。GEの変革は、IoT時代の到来が明確になった象徴ともいえます。そこで企業経営、そして人の働き方も大きく変化するのは間違いないと思われます。

 振り返ってみれば、20年前の1995年、日本にもインターネットが普及し始めた頃には、大手都市銀行が合併し、いくつかの金融機関が破綻しました。2000年に入ってからは、総合電機メーカーなどの製造業もリーマンショックなどで大きな打撃を受け、いくつかの会社が買収されたり、縮小を余儀なくされたりしました。この間、予期せぬ失業、転職、収入の減少、過酷な仕事環境など、私たちの仕事の内容や働き方が大きく変化しました。もちろん、ネットを使ったビジネスの誕生と、その急成長による新たな仕事が生まれたり、ネット環境を活用した自由な仕事のスタイルが可能になったり、仕事をする上で良いことも多くなりました。

 ネットの影響だけでなく、新興国の成長といったグローバル化も、働く環境の大きな影響因子です。もはや私たちの生活は、新興国でつくられた製品なしでは成り立ちません。また、多くの企業の製造、マネジメント拠点も海外にシフトしました。そこでは日本人よりも現地の人の雇用が優先され、日本人には“グローバル人材”と銘を打った、報酬に見合う、より高度なマネジメント能力が求められるようなりました。

 このように、1990年代初めまでの時代とその後の時代では、仕事環境がガラリと変わりました。偏差値の高い大学を卒業したから、大きな上場企業に勤務しているから、雇用が安定している公務員だからという考えは通用しません。一旦獲得した仕事、立場などが保障されない、大変不安定な社会になりました。これは決して日本だけではなく、米国、欧州、中国なども同様だと思います。決して弱気になっているわけではありませんが、生きていくのが簡単でない、難しい時代になったといえます。

 このような社会経済環境の中で、唯一食っていくのに間違いがないと思われる仕事があります。それは、“起業家精神をもって仕事をするという”仕事、いや、仕事スタイルです。

失敗し、財産を失う可能性があるにもかかわらず、起業家精神を持って仕事をすることがなぜ食っていけることにつながるのか?それにはいくつかの理由があります。

 1つ目は、起業家精神は変化を機会とするからです。IoTの時代、グローバル化の時代の本質とは、「何事も定まることが無く、すべては生成変化の中にある」ということです。つまり、変化が当たり前の時代なのです。変化そのものを機会とすることで、大きく成長することが可能になります。

 2つ目は、起業家精神は結果から考えるからです。ベンチャービジネスは、常に結果を出すために、エネルギーを注ぎ続けなければなりません。自転車操業が当たり前です。しかし、この自転車操業スタイルが、実は人や組織に常に緊張感を持たせ、変化に対応しやすくしてくれます。

 3つ目は、自分の価値観にもとづいた自己実現を達成することに対するエネルギーとやりがいが、人を大きく成長させるからです。当然、社会は競争社会です。最後に競争に勝てる人とは、取り組む仕事が大好きでライフワークだと言える人です。そういう人は仕事で疲れることがありませんし、失敗もすべて学習のきっかけと認識し、達成を諦めません。仕事に対し、報酬という尺度以上の内面的な評価基準を持ちます。

 4つ目は、誰かから仕事をもらうのでなく、自分で仕事を創りだすからです。仕事を創りだし、提案し、新しいエキサイティングな価値を社会に提供するのが起業家精神です。したがって、「失業」という言葉は当てはまりません。たとえお金が入ってこなくても、仕事はあるのです。

 最後5つ目は、人はなぜ仕事をするのかということに、しっかりとした答えを得られるからです。もちろん仕事は収入を得るため、家族の生活を守るためのものでもありますが、それだけではありません。仕事を通じて、何らかの形で社会に貢献することが重要です。貢献することで、なぜ仕事をするのかという問いに対して明確な成果という答えを得ることができ、高度な達成感を味わうことができます。

 起業家精神を発揮するためには、会社を辞めて起業をしなければならないのか?というと、決してそんなことはありません。大企業にいても、公務員であっても、NPOに勤めていても、家庭の主婦でも、だれもが起業家精神を発揮することは可能です。たとえ「今やっている仕事が自分に合わない、だけど家族のことを考えると転職もできないし、起業もできない」といった人でも、ボランティアや趣味のネットワークづくり、家族の世話、自分自身の勉強や研究などで、起業家精神は発揮できます。起業家精神をもって仕事をし、生活をすれば、制約にとらわれない自由な生き方で一生食っていけるのではないかと思います。

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