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異業種との連携がキーとなる時代 ~日本一、世界一の強みを持つ個人になろう~

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

 いま、次の時代の成長戦略が求められている中で、新製品・新事業開発の方法も以前とは大きく変化してきているように思います。

 最近、私の周りで「あの企業、これから成長するに違いない」「あの課長、なかなかやるじゃないか」とアンテナ感度の高い人から、「高橋さん、このテーマを異業種でフリーディスカッションしてうまくいったら、新しいビジネスモデルになればいいんですが、応援してくれませんか」「1社では、いつもの発想になるので、異業種を巻き込みたいんですけど、どこかよいパートナー企業いませんか」「うちの業界をエンターテイメント業界からの活用を考えてみたいんですけど…」といった相談がちょくちょく来るようになりました。

 つまり、新事業や新製品の開発を一企業単独で企画・構想するのではなく、異業種連携で行えないかと考える企業(ビジネスパーソン)が、少しずつですが増えてきたのだと思います。

 そんな中、先日ある機器を中心としたコンソーシアムのキックオフ会議がありました。このコンソーシアムに参加しているメンバー企業の業種はバラバラで、活動地域も北海道や九州、北陸、大阪、東京といった具合に散らばっています。異業種での戦略仮説は以前から個別に議論していたものの、全社が集まるのは初めてでした。

 各企業の自己紹介が始まった途端、参加メンバーは様々なアイデアを出し始めました。「うちの業界から見れば、それは大変興味深い。こんなアイデアがありますが、いかが」「ぜひその実証実験の場に行かせてください」「私たちの会社ではモノになりませんが、ここにいる企業と組めば、必ずビジネスモデルができるはずです」といった意見が多く出されたのです。

 これまで仕事の中で、異業種での新事業・新製品開発のプロジェクトを推奨してきた私にとっても、その盛り上がり方は驚くほどでした。

 なぜ、異業種での新事業・新製品開発プロジェクトに大きな期待が寄せられているのでしょうか。大きく2つの理由が考えられます。

 一つは、ネットが隅々まで普及し、異業種の連携がスムーズかつ当たり前になってきた現在、新たな連携をつくることで従来とは異なる発想を展開していかないと、顧客に置いてきぼりにされるという危機感があります。

 わかりやすい例がアマゾンや楽天などの巨大なエコシステムでしょう。どこからでもスマートフォンでアクセスすれば、業種を超えて何でも購入できたり、様々なコンテンツを楽しむことができます。顧客が一企業の先を望んでいるからこそ、賑わっているといえます。

 二つ目は、どのような会社であっても、社内からは新しい発想が生まれにくく、生まれたとしてもダイナムズムが少なく、企画段階で競争優位に立てないことが明確になってきたからです。

 例えば、米グーグルが自動車産業に参入したり、ゲームベンダーが医療ビジネスに参入する、あるいは家電業界が農業ビジネスを始めるといった具合に、これまでの発想では考えられない連携が生まれています。顧客は無意識にもそういったダイナミックで新規性の高い製品・サービスを期待するようになりました。

 このようなことからも、企業内部で価値を創造するという“囲い込み型”の発想が終わりを告げ、オープンスタンスで外部と連携することで新たな価値を生み出す時代にハッキリと移行しつつあることが理解できると思います。

 従来、利益を上げてきた、きめ細かなすり合わせや、内製化などの内部志向の考えだけでは企業の発展は考えられません。ネット時代においては、それだけの発想では優秀な人材も確保できないのです。

 では「異業種連携で取り組めば、新事業・新製品開発は簡単に進むか」と問われたら、それは“ノー”です。むしろネットの時代になって、パートナーの取捨選択はより厳しくなったように感じます。

 さらには会社のブランドや規模などだけでパートナーとして選択されるとは限らず、それに加え、コラボレーヨンする個人の個性、能力が鍵になります。誰が誰とコラボレーションするかが極めて重要になってきています。たとえ会社や組織が世間で知られていなくても、そこの個人が優れていれば発展性の高い新たなコラボレーションが生まれます。

 では、異業種連携でのコラボレーションで選ばれる個人とはどのようなタイプなのでしょうか。私の実務上の経験から振り返ってみると、以下の3つのような特性が挙げられます。

特性1:誰にも負けない強みを持ち、日々研鑽していること

 ネットの時代では誰にも負けない強み--つまり専門知識やスキル、能力を持ち、常に磨くことが大切です。日本一は当然のこと、世界一を目指すものでなくてはなりません。誰とでも容易にアクセスしやすいネットの時代では、強いもの同士がネットワークすることが勝敗を決めます。たとえ狭い領域であっても、突出したものがあれば、多くの人や組織とネットワークできます。

 「高効率エンジン設計の専門家」「画像処理ソフトの専門家」「人工皮膚の専門家」など仕事の分野でも、「草花の専門家」「茶道の専門家」「台所用品の専門家」「幕末の農家の生活実態の専門」といった趣味でも構いません。極端な話、何でもよいのです。

 狭くても突出した強みは、世界の企業、個人、政府、NPO(非営利団体)などとネットワークされ、活用される可能性があります。しかし、それは突出していなければなりません。早い段階から自分オリジナルの専門分野を磨き、それを世に発信し、世界の競合と伍していかなければなりません。

 企業単位で考えると、問題は、企業がそのような突出した能力を見つけ、育成しているかです。社内での連携を重視するあまり、金太郎飴の人材を多く育ててしまう風土では異業種連携は難しいと思います。以前にも増して、企業では個性的で優れた能力を持つタレントを確保し、育成することが大切になってきています。

特性2:多様な人とコラボレーションする能力を身につけること

 優れた専門的な知識、能力があっても、多様な人とコラボレーションすることが苦手な人は、成果を出すまでのリードタイムが遅く、それ自体が失敗の原因にもなっています。自分の専門を他の専門分野とうまくコネクトして、より大きな成果を出せるコラボレーション力が大変重要です。

 ここでいうコラボレーションとは、同質性の高い組織の中でのコラボレーションではなく、多様な個性、文化、専門性の人とのコラボレーションです。

 多様な中でのコラボレーションには、いくつか大事なことがあります。一つ目は目的、ビジョンを共有すること。二つ目は違いをマイナスにするのではなく、新たなことを発想する起爆剤にすることです。

 異なる国、企業文化、専門性の人や組織といかにコラボレーションするということは、学校ではなかなか教えてくれません。知識だけで学ぶことが難しく、現場で体験することが重要です。

 また、いったんコラボレーションできたとしても、いつの間にか価値観が固定化し、新しい場面ではコラボレーションできない場合もあります。常に自分を多様な価値観の中に置き、自分の個性、強みを新たな視点で見直し、その場に貢献することができるよう鍛えていかなければなりません。

特性3:徹底して成果にこだわること

 異なる分野のコラボレーションとは、新たなものを生み出す源泉ではありますが、成果を保証するものではありません。むしろ成果を出すのが難しくなる要因と言えます。そこにマネジメントという考え方が大変重要になってきます。

 成果を出すには、体系的なシステムが必要になり、経済性が向上する方向に変えていくことが求められます。異なる分野の人とのコラボレーションで生まれたユニークなアイデアやコンセプトは、何らかのシステムに収斂され、継続して成果を生み出す形にマネジメントしていかなければなりません。

 マネジメントによってシステムが効果的に作り出される原点とは、人の強い成果意識にあります。厳しい言葉でいうと、結果を出す集中力ともいえます。皆さんの周りで優れた業績を継続的に出している人を思い浮かべてください。そのような人は決してできなかったことや、遅れた言い訳はしません。人一倍、成果にこだわり、妥協しません。しかも、単に時間をかけるのではなく、発想を変えた工夫をします。

 今回は、異なる分野の人や組織とコラボレーションが上手な人の特性を私の経験からピックアップしてみました。

 良いコラボレーションにはもっと多くのコツ、法則があります。しかし、それは実践を通じてしかわからないと思います。皆さんもぜひ、異なる分野の人、組織とのコラボレーションに挑戦してみてください。

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