
生産財グローバル・マーケティングのケーススタディ ~東レ・炭素繊維事業~
新商品・新事業開発「グローバル・マーケティング」
弊社コラムでは数回に亘って生産財メーカーのグローバル・マーケティングのポイントを説明してきた。今回は事例紹介として、東レ株式会社のグローバル・マーケティングの取り組みについて考える。
ご存知のとおり東レは生産財メーカーとしてベストプラクティス企業の一つであり、その研究開発とマーケティングは他社からのベンチマーキング対象となることも多い。東レのマーケティングの主な特徴として、多様な業界の有力な顧客企業とのパートナーシップが挙げられる。2003年に販売されたユニクロの「ヒートテック」は、東レとユニクロの共同開発の賜物であり、東レのマーケティングの象徴的な成功例である。この例では、繊維素材を提供するだけでなく付加価値のある製品自体を提供しなければならないという考えから、東レはユニクロに共同開発を持ちかけ、イノベーションを起こしたのであった。
東レは顧客企業など他社とのパートナーシップ戦略に長けている。そして海外においても、有力な他社とパートナーシップ戦略を採ることで成功を収めてきている。今回は、東レのグローバル事業のうち、長い海外展開の歴史がある炭素繊維事業(※)を取り上げる。
1.東レの炭素繊維事業におけるグローバル・マーケティングの特徴
東レの炭素繊維複合材料事業は、全社の連結売上1兆5886億円(2011年)のうち、700億円の売上を占めている。特に海外での需要が高く、売上の海外比率は90%にのぼる。競合には帝人や三菱レイヨンなどが存在するが、東レは売上・利益ともにナンバーワンである。
なぜ、東レはこのような成果を獲得できているのだろうか。炭素繊維複合材料事業のグローバル・マーケティングの全体像を示すと図1のようになる。
東レの戦略には、図中にあるように3つの展開がある。
① 隣接事業を行う現地企業とのアライアンスによる市場参入と学習
② 顧客である最終製品メーカーとの合弁会社設立
③ 企業買収を通じた試作部品提供による需要拡大
これらについて順に説明をしていきたい。
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