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国内事業からグローバル事業への変革のための戦略的パートナーシップ ―投資ファンド活用の視点―

アドバンテッジパートナーズLLP 代表パートナー
笹沼 泰助
2012年10月11日、日経ビジネス主催のセミナー「アジアにおける競争戦略コンセプト ー「戦略」「投資/マネジメント」「法務」3つの視点から-」にて、弊社ニューチャーネットワークス代表取締役の高橋が、アドバンテッジパートナーズ代表パートナーの笹沼泰助氏、TMI総合法律事務所パートナー弁護士の淵邊善彦氏と共同公演を行いました。本コラムは、同セミナーでの笹沼氏の講演録を(ご本人の許可をいただき)掲載させていただきました。高橋が「戦略」の観点から論じたうえで、笹沼氏にご登壇いただきました。

 私は1992年に今の会社を設立いたしまして、1997年からいわゆる投資ファンドの運営を行ってまいりました。それから15年が経ちます。第一号のファンド以来、これまで計5本のファンドを立ち上げて、40社前後に出資しています。そのうち今の時点で半数以上が回収されています。
 ここで投資ファンドという言葉が出てまいりますが、色々なタイプのファンドがあります。私どもが取り扱っておりますのは、最近の言葉ですとプライベートエクイティファンドと呼ばれたり、あるいはバイアウトファンドというように呼ばれたりすることがあります。いずれにしても、企業買収を主たる目的とした投資ファンドであるとご理解いただければと思います。
 投資先様はおよそありとあらゆる業種に展開しております。企業の規模も、たとえばダイエーというのはその当時売上1兆円、従業員5万人という大きな会社でした。産業再生機構さんから私たちをパートナーとして選んでいただき、いろいろな施策を丸紅さんと一緒に実施しました。一方で、投資先のなかには売上10億、従業員50名という中堅中小の企業さんまであります。
 我々の特徴の一つは、香港とシンガポールにもオフィスがあるということです。日本からだけでなく、その二つのアジアの拠点からも、投資先の評価、支援等を行っております。現地にネイティブのスタッフがいるというのが効率的に事業支援をできる強みでもあります。
 

■日本企業のグローバル化

 グローバル戦略について結論的にまとめますと次の3つになろうかと思います。まず、今やグローバル戦略というのが一部の大企業のものだけでなくて、内需中心の大企業、あるいは中堅中小まですべての企業にとって検討すべき戦略的な施策である、ということが第一点です。適切な実行プロセスの管理をしますと、そこで十分な収益が実現できる、あるいはそこで成長機会を獲得することができる、という非常に有効な戦略的な施策であるということがあります。
 第二点が、その実行に関して豊富な経験を有した人材の採用とチームワークが必要であろうということ。これは私どもファンドの成功、失敗の様々な経験から感じていることです。企業のグローバル化の経験者というのは、日本の主に大企業のセクターに多数存在しています。そうした方々の経験や情報を共有していただくことで、現地での最適なパートナーの発掘も可能にもなります。場合によっては業界内の他社から人をお招きする、あるいは異業種からグローバル化の経験がある方をお招きする、あるいは中堅企業であれば大企業で経験を積んだ方をお招きして自社のグローバル化のリーダーシップをとっていただく、といったことが可能かと思います。
 三番目として、各企業の事業展開、グローバル化に関して、投資ファンドやバイアウトンファンドの活用というのを一つの選択肢としてご検討していただきたいということです。私どもバイアウトファンドというのは、投資先様からフィーをいただいてそれを売上の源泉としているビジネスモデルではありません。投資先様と一緒に、たとえばグローバル化を実現していく、そこで売上があがり、オペレーションが回り、企業価値の向上が実現できた時に初めて我々の経済的メリットを実現することができるのです。したがって投資先様とわれわれ投資ファンドというのは、リスク・リターンの観点から、全く同じ船に乗っていく立場であるということから、リスクを伴う海外への展開、あるいは事業分野の切り出し、そして新しい分野への展開ということに関して、投資ファンドをお使いいただくというのは、一つの有効な施策ではないかなと思っています。

■世界経済の新しい現実

 グローバル化のアジアにおける展開というところに入りますが、2008年のリーマンショックを契機にした世界の金融経済市場の混乱というのは、世界経済を少し異質なものに変えたという印象を持っております。単にダウントレンドになったということではなくて、あの出来事があって、われわれの経済社会、金融の世界が異質なものに変わってしまった。われわれとしては、状況を相当冷静に分析し、対応する必要というのを非常に強く感じています。
 世界経済の新しい現実として3つの側面にまとめました。まず明らかに世界的に需要構造がシフトしている。ゴールドマンサックスさんが、BRICSという言葉をおつくりになって、新しく成長する各国というのを示していますが、明らかに需要というものが多極的に分散し始めています。
 それから二点目は市場としての日本の限界です。これは皆様も当然感じていらっしゃるかと思いますが、実は日本のGDPの変化を分解してみてみるとおもしろい現象があります。日経平均が3万9000円をつけたバブル時代、その当時日本の輸出が41兆円ありました。それから20年、2007年にはどうなっているかというと、80兆円に倍増しています。よく「失われた20年」といわれますが、実はこの20年で、たとえばコンポーネントの輸出が伸びたと成長を感じていらっしゃる向きもあると思います。その観点から見ますと、この20年、どこが問題だったのかというと、内需が激減している。これは当然少子化からくる人口構成の変化というのがありますが、一番大きなファクターは就労人口の減少です。GDPを構成するいろいろな変数がありますが、この就労人口は非常に大きな要素となっている。実際にお金を稼いで消費の原動力になってくる方の数が高齢化によって減ってくる。したがって日本の内需型のサービス業さんは、この20年本当に苦労している。これは一つの日本の経済の構造上の問題と考えています。
 ではこういった企業がどうすればいいでしょうか。私どもは外食チェーンにも出資していますが、たとえば美味しいソースを開発する、これだけでは売上が2倍になるとは思えません。ビジネスモデル全体のパッケージとして、今までなかったような国に移転できないか、そこでまた売上を、収益をあげることはできないかという検討が必要になります。そうすると例えばある外食チェーンでは、今アメリカで40店、アジアでも20~30店、高級レストランとして展開をするということをしています。
 そして3番目が、製造拠点としての日本の限界です。これはもう当然ながら、相当以前からいわれておりまして、長期に亘る円高によって、日本は世界の製造拠点としての地位は数十年前にすでに終えて、今や中国自体もどうなるかというくらいの状況となっています。このようにどうやら質の転換が起こってしまっていて、それはもう元にはもどらないかもしれないという中で、どのように日本企業が、単なる輸出入だけではなく、大企業もあるいは中堅中小企業も、そのグローバル戦略を考えないといけない、非常に大きな課題となっています。
 

■グローバル化の成功例

 様々な投資の経験を通して、われわれとして感じ取れますことは、経営体制、人事・組織運営に関して、オペレーションとしてどうなのかということ、そしてM&Aの効果としてどのようなことがあるのか、少し経験をまとめてみます。ここではわれわれの投資先様の一つである自動車の部材メーカーを例として考えてみます。
 まず、経営体制や組織運営に関しては、グローバルに共有できる事業戦略と、経営者層の価値観の構築、これが重要です。このメーカーさんは、トヨタ生産方式をとっていました。いうなれば製造業の言語のようなものです。このメーカーさんは、相当高頻度に生産拠点を移していますし、また大きな買収をやっていて、世界中に生産拠点を持っています。そして新しいところに工場をたてて、新たに従業員さんを雇って教育するというのは大変な作業になるわけですが、その際、長年自社で培ってきた自社の理念であり手法であり共通の言語である、トヨタ生産方式というのをツールとしてオペレーションをうまく行っているわけです。ここではトヨタさんの生産方式が素晴らしいと言っているわけではありません。ただ、何か日本だけではない、世界で共通的に適用可能な手法なり言語なり、あるいは理論体系とかとして非常にうまく活用していたという事例です。
 次にM&Aの効果ですが、このメーカーさんはグローバルで競争していた同業を買収することで、顧客基盤が一気に世界中に広がりました。もともと顧客としては日本の大手自動車メーカーが大きかったのですが、2008年のグローバルクラッシュによってその国内メーカーさん自体の売上が30%減ってしまった。しかもこの出来事はわれわれが投資した直後に起こりました。大体悲劇的なことっていうのは投資した直後に起こるんです。さてこの事態に対応するためにどうしたらいいかということをわれわれは考えました。まずは生産拠点、徹底的にコストが安いところに移転していく、これがまずあります。そして企業買収を行って、顧客の分散化を図りました。それまでは少数の顧客への依存度が高かったために、顧客の業績の自社への影響があまりに大きかった。そこで顧客ベースを買収するということを行いました。同業他社を買収したことで、日・米・欧・アジアの主要自動車メーカーの大半をカバーできるようになりました。売上のリスクが分散されるという、こんな効果がありました。

■投資ファンド活用の可能性

 われわれ投資ファンドは、グローバルな事業展開の支援、経験を相当持っております。先ほど申し上げましたように、われわれはサービスプロバイダとしてフィーをいただくのではなくて、あくまでリスクをとって資金を入れて、本当にその事業が成功した時に初めて、われわれの経済的ベネフィットの獲得を実現させていただくということです。当該企業あるいは事業の皆さんとまったく同じ船に乗ってということです。
 そんな意味では、皆様からすれば扱いやすいパートナー候補であるんではないかと思います。最後はすこし宣伝になりましたが。時間ですのでこれで私の話は終わらせていただきます。ありがとうございました。

 

アドバンテッジパートナーズ 代表パートナー 笹沼 泰助

アドバンテッジパートナーズ 代表パートナー 笹沼 泰助

慶応義塾大学法学部卒業、同大学大学院経営管理研究科修了(MBA 経営管理修士号取得)、戦略理論、マーケティング理論専攻、ハーバード大学ジョンエフケネディ政治行政大学院修了(MPA 行政管理修士号取得)、財務管理、国際関係専攻。 大学卒業後、積水化学工業株式会社にて、営業部、人事勤労部、総合企画室、新規事業プロジェクトを暦職。大学院修了後、米国系戦略コンサルティング会社、ベインアンドカンパニーおよびモニターカンパニーにて日米欧有力企業の企業戦略の立案、個別事業の競争戦略の立案、収益性改善計画の立案と実行などの業務に従事。1992年アドバンテッジパートナーズを創立、共同代表パートナーに就任。研究論文、寄稿記事に「ベンチャー企業に見られる新しい競争原理」、「日本のベンチャー企業の競争戦略」、「日本企業の買収後の統合戦略」、「中堅企業の長期計画」、「ベンチャー企業の競争戦略」などがある。

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