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日本企業グローバル化の成功のカギ“異文化力”とは

桜美林大学 経済経営学系 教授 筑波大学 客員教授
馬越 恵美子
2011年10月27日、弊社ニューチャーネットワークスは、グローバルエイジ研究会の公開シンポジウムを開催いたしました。本コラムは、シンポジウムにて「日本企業グローバル化の成功のカギ“異文化力”とは~ダイバーシティ・マネジメントと異文化経営の視点から~」と題する馬越様の講演録を(ご本人の許可をいただき)掲載させていただきました。

ニューチャーネットワークス 程塚 正史

本日はこのような栄えある研究会にお招きいただきまして、誠にありがとうございます。大変僭越ではございますけれども、話をさせていただきます。私は大学におりますが、皆さん日頃リアリズム、現実の中で格闘してらっしゃるという方が多いと思うんですね。今日はリアリズムをベースにしつつ、コンセプトも入れながら話をしたいと思っております。

さて皆さん、3月11日はどこにいらっしゃいましたでしょうか。私は東京で遭遇してしまったんですけれども・・。この間、ヨーロッパからのインターンを受け入れている団体の方から聞いたんですけれども、3月11日の後、数日経ったころに、インターンの方がサッといなくなったというんです。次の週には、あまり報告もなくほとんどの方がいなくなってしまったそうです。よく調べてみたら大阪に逃げた人がいたり、韓国に逃げた人とかもいたりします。インターンを受け入れるっていろいろと大変ですよね。それなのに自分たちに対する恩義はなんだろう、というわけで、憤慨した企業もあったと聞いております。皆さんこれを聞いてどうお考えになりますか。これはどうしたらいいと思われますか。
はい、こういうところでパッと手が挙がることがすごいことだと思います。皆さんの顔を一瞬見ましたら、多少顔が強張った方もいらっしゃったでしょうか。「分かりますか」と聞いたときに顔が強張るというのは、“正解”を求めているからなんですね。でも今の時代、なかなか“正解”はない、一人ひとりの納得する回答を見つける時代になってきたという感じがするんですね。どうも特に高学歴者は“正解”をひとつに求めるトレーニングを受けていますが、柔軟な対応というのが出来ないといけない時代になってきました。これからは世界観とかビジョンを持つ人が求められるのではないでしょうか。もうひとつだけの正しい解答はないんですね。学生にも「どの会社に勤めたら良いですか?」とよく聞かれます。もう全然解答がない質問です。
“危機”というのは“危険な機会”だなんていう人もいますが、私は「異文化力」という視点からこの時代を切り開いていったらどうかということで、今日のお話をしようと思います。「文化の異なる人々に共感する姿勢」「そういった人々を理解する知性」、そして「文化の異なる人々とともに未来を作る情熱」、これらが大事です。

早速ですが、これから求められる人材というのは、「多国籍の中で働ける人」だと思います。グローバル人材というのは、多国籍チームの中で働ける、あるいはそれを「引っ張っていける人」だと思うんです。
色んな能力が求められると思うんですけれども、まず「論理的思考」です。でもどうも思考が現場に引っ張られてしまい、conceptualizationを結構忘れてきているという感じがしています。ビジネススクールでも、意外にconceptualizationを言っているんじゃないでしょうか。サンデル教授の授業が素晴らしいなぁと思ったのは、彼は哲学とともにconceptualizationを言っているんですね。日本においては戦後、この概念が忘れられていたような気がしないでもないです。
それから「プレゼン力」ですね。アップルの成功も製品力だけでなく、スティーブ・ジョブスのプレゼンテーション力があるんじゃないかと思います。あと自分で判断するという「判断力」です。周りを見るのではなくて、自分でリスクを取って判断することですね。これが出来るようで出来ない。学生を見ていて非常に感じます。そして「人としての魅力」です。これは皆さんあるんですが、なんとなく日本では出さない方がいいとか、推し量ってもらえるとかありますね。でももう少し出していっても良いんじゃないかなと思います。

コンセプトについて少し触れたいと思います。日本の企業の国際化という大きな流れを歴史的に見てみますと、3つに分けることが出来ると思います。
最初は輸出・輸入の時代がありました。企業の中に国際部というものがあって、そこが一手に引き受けていたり、または商社が間に立って進めたり、ということがありました。これはモノが海外に行っていた時代でした。
それが1985年のプラザ合意あたりから、今度は人が海外へ、そしてその現地化というものが進みました。これは渋々とreluctantに現地化をしていったという局面が続いたと思います。現地社員による業務が行われるという第二の時代がありました。
そして次が現代。これは企業によって温度差がありますけれども、トップが多国籍化している。そういう時代になってきています。また日本人のトップもまた非常にグローバルなビジョンを持った人になってきていて、あるいは本社が海外に移転するとか、世界に分社化してとか、いくつかは海外にあってとか、そういう状況になってきています。まさにグローバル経営、異文化経営の時代になったのではないかと思います。

それではグローバル経営とは何かと言いますと、色んなことが言われていますけれども、「国籍を超えるあらゆる属性を超えた経営」ということと思います。
いろんなアンケートからも、最近では身近なところにこのごろは外国の方がいるということですね。それはマイナスの面もプラスの面もあるということですが、あるアンケート調査によりますと、マイナス面としては以心伝心が難しい。これは私自身も非常に思います。私も日本人ですから、以心伝心は大好きです。良いですよね。やはり1を聞いて、10を知ってほしいです。でもグローバルな状況ですと、面倒くさいけれども10を言わないと、10伝わらないということがある、そういう局面にきていると思うんです。
さて、グローバル経営には利潤の追求をするという普遍性と、人の活用という文化相対性の二つの面があります。人のやる気をどう出すか、モティベーションを上げるにはどうしたらよいか、これは難しいですね。文化によって異なりますから。日本企業はやり方が分かりにくいんじゃないかと思います。アメリカの企業が中国に行って上手くいくのは、システム的に優れているとは全然思わないんですけども、でも分かり易いんです。頑張れば給料が上がって、よいポジションにつけて、転職しても大丈夫。転職もお互い納得済みで、いる間には頑張ってもらって、一方でいる間に給料をもらって、とシステムがとても分かり易い。
日本のやり方には非常に深い良さはあるんですが、これを海外に持っていくのはなかなか難しいです。文化相対性というところをもっと追求していくと、惹きつけることができるんじゃないかな、と思います。「グローバル経営」というのは、非常に矛盾した難しさが元々あるわけです。

さて、2003年に有志とともに異文化経営学会というものを立ち上げました。この「異文化経営」を英語で言いますと、昔はCross-cultureとかInter-cultureとか言ったんですけれども、今は、Transcultural-managementです。文化を超越するのは難しいと言われますが、文化を超えて経営ができるんじゃないかという考え方でこの言葉を使っております。多国籍・多民族・多文化の人々が構成する企業を経営し、ビジネスを行うということです。
異文化経営ですが、はじめに提唱した人はオランダの人なんです。オランダというのは多国籍でないと成り立たない国です。市場が非常に小さいので外に出ていかないといけない。ホフステッドさんという方が作った学問なんです
彼は1970年に、世界中のIBMの社員11万人を対象に調査を行いました。11万人にアンケート調査をしたんです。数年かけて調査を行ったという事で、この話が、ベースとなって学問として出来上がっていったわけです。東ヨーロッパとか、旧ソ連の配下にありました国々は、当時政治のプレッシャーが掛かっていましたので、ちょっと違うんじゃないかと思いますが、日本はあまり変わっていない。
ホフステッドさんは11万人を調べて、ものすごいサンプル数を集めて、統計的な分析をして、5つの切り口を見出しました。それは、ビジネスのやり方、ビジネスの習慣が国によって違うんだと言うんです。国によって、権力格差があるか、個人主義か集団主義か、男性度か女性度か、不確実性回避の強さはどうか、それから長期的思考か短期的思考か、ということです。これをいろんな国に当てはめて考えて、少し頭に置いておいてビジネスをすると、ステレオタイプでは多少危険性もあるんですけれども、なにか問題があったときに、慰めにはなりますね。「上手く行かなかったのは、このせいか」みたいな感じもありますし、ある程度コンセプトを持っているのも大事かなと思います。

もう一人、同じくオランダのトロンペナーズという方も同じような研究をしています。IBMではなくて、Shellなど5社ですね、膨大なサンプルから人の行動、ビジネスにおける行動は違うんじゃないかということで見ています。その中で面白いのは、業績と属性、どちらを重視するかということが、やはり国によって違うんです。
業績重視といいますと、やはりアメリカは業績重視かなと思います。日本はどちらかというと属性重視ですね。名刺を交換するときに、皆さんは名刺の何をご覧になられますか。やはりその方の会社名と、そして地位ですね。そうしてある程度のdistanceをはかりますよね。でもこれは国際的にはちょっと違うんじゃないかと思うんです。日本は特異的な例かと思うんですけど、名刺の交換は全員とするということが日本は必ずいたしますし、名刺をもらうと少し安心しますよね。
でもアメリカでは名刺を交換するときもありますけど、まずはよく話をします。部屋に入ってすぐにみんなで名刺交換をするっていうのは、やはりちょっと日本の特異的な行動ですね。
あと環境との関係、これも日本と欧米では違います。欧米の場合、環境を征服していく。日本は自然の中の自分です。虫の音を聞いて「あ~秋が来た」とか情緒的ですよね。イギリスの人に蝉の音はどうかと聞くと、「蝉はうるさい、Noise!」って言います。イギリスにはもともと蝉はいないそうなのですが、とにかく虫の音は情緒的だな、とか思うのは日本の環境との一体感ですね。これはまた良いことだと思います。紅葉だって素晴らしいし、21世紀はこういった時代であってほしいな、と思うんですが、またそうでない人がいる、ということも考えて話すことも大事かなと思います。

ナンシー・アドラー(Nancy Adler)という人は、異文化シナジー、cultural synergyという言葉を使っています。これは普通の言葉になってしまいましたけれども、1+1は2以上であり、自分と違う人がいたほうが面白いということです。今日この会場を見ますと、やっぱり男性の方が多いですね、そして日本の方がほとんどですね。悪い意味ではないですが、おそらく日本ではこういう状況です。でも海外に行くとかなり違う。そういうところで仕事をしなければならないです。

では「文化とは何か」ということですが、一番は「慣れ親しんだ価値観」ではないかと思います。自分の中で慣れ親しんで、言わなくてもいいこと、気が付かないことですね。いつ気が付くかと言いますと、相手が違うことをしたときです。「なぜあの人は私が言ったことをこう捉えるのか」とかいうときに価値観が違うと思うのです。
これはもちろん国籍が違ってもありますし、たとえば東京と京都でもちょっと違うかなという気がしますし、男女間でもありますね。たとえば、男性が「あのラーメン屋がすごく美味しいから食べに行こう」と言った場合に、女性は「あそこ、混んでるんじゃない?」って言ったとします。これはどういう意味でしょうか。混んでいるとかそういう話ではないんですね。私をラーメン屋に連れて行くのかということですね。私はラーメン屋程度の女かと。フランス料理に連れていけ、ということではないかと思うんですね。そういうご経験はないですか。(笑)
言ったことの意味をどう捉えるかというのは、その背景に何らかの価値観が潜んでいるからですね。その価値観を前提に解釈しようとすると捉え方が変わってきます。そういう奥の深さが異文化コミュニケーションにはあるんです。
つまり、コミュニケーションから見た異文化というものですが、これをコンセプト的に言いますと、コンテクストが違うと分かり合わないということなのです。日本にいますと、高コンテクストです。つまり共有する前提条件が大きいのです。そういうのが海外では利かないんですね。共通するものが少ないからです。どうしたらよいかと言いますと、話をしなきゃいけない。一つ一つ説明をしなければいけないです。面倒くさいんですけれど、駐在したことがある人にはご経験があると思いますが、説明をしないとコンテクストを作り上げることが出来ない。異文化経営におけるコミュニケーションではこれは必然的にあるんですね。

良いコミュニケーターには、多様性を受け入れようとするマインドセットが求められます。多様性を受け入れるというのは、簡単そうですけど、大変難しいと思うんです。違うことを言うと「なぜ?」って人間は思うと思うんですよね。先ほどの例で、3.11の後に欧米の人たちはみんなすぐに帰ってしまって、「なぜ?」「なぜ日本に居ないんだ、けしからんじゃないか」と思うのか、もしくは「なるほどそうなんだ」と最初から想定しておくのか、そういうbehaviorを最初から受け入れるということも大事かなと思うんです。
つまりどういうことかといいますと、数式的には簡単で、y=axということです。私が今お話しているのは、xで、皆さんがお持ち帰りになられるのがyということなんですが、自分の中で処理する能力とか、関心とかが、私の話に掛かります。これがaです。国内の人のaと、違う国の人のaとが、非常に乖離していることもあると思うんです。したがって、自分が伝えようとしたことはxであるんですけども、それがそのままyになることは、ほとんどない、絶対にない、と言っていいと思います。それぞれが違うaを持っておりますので、海外で100人にお話した際には、皆さんの話がxであったとしても、100通りのyがあるのです。もちろん国籍が違うからといって、必ずしも乖離しない場合もあるんですけど、そういう「違うという認識」がとても大事なと思います。
したがって、そうなると「人間力」というものがとても大事になってきます。組織の力ではなくて、自分としてどうなのか、自分が人としてどう見られているのか、どう魅力があるのか、ということがポイントになると思います。

もう一つ、たとえば日本人の思考を欧米人に照らし合わせて思うのは、日本の場合はあるものを積み上げていくことが非常に長けています。なかなかscrap & buildが出来ない、build & buildでいっている、というような気がします。一方、欧米人の場合は、犠牲を伴う改革型というんでしょうか、あるべき姿を想定して、そこへどうしたら持って行けるかということだと思うんです。日本人の場合、実務は非常に優れていると思いますし、柔軟性もありますけれども、積み上げて行くという、どうしてもscrapがなかなか難しいというのが、なかなか改革が進んでいかないということの原因ではないかと思います。

次にダイバーシティ・マネジメントということなんですが、皆さんご存知のとおり、今日本でも非常に言われてきています。色々な属性を広く活用していこうという事で、皆さんの会社にもそういった推進室をお持ちのところもあると思います。IBMでは、昔からダイバーシティ・マネジメント担当の副社長などがおらしたりしますね。多くの日本の企業も今やってらっしゃると伺って、私も研究会とか行かしてもらったりしています。ただ、そのダイバーシティ推進室室長というところにはなぜか大体女性が多いんですね。そこのところはなぜかなぁと、これはもう少し男性の方がいらっしゃると良いなぁと思います。
女性という面でお話しますと、日本の企業には管理職の女性の比率が少ないですね。これはアメリカですと46~47%になっておりまして、フィリピンなんかも非常に高いです。フィリピンでは家庭的な仕事をしなくても良い、という社会的に違った面とか、階級が違うとかもありますけれども。いずれにせよ日本では意識の改革が必要になってくると思います。これも異文化経営と同じような感じだと思うんです。個々の能力を活かすという事が大事だと思うんです。

かなり前になりますが、私も「マインド・ウェア」というコンセプトを生み出しました。これは、「多様性を活かし、異質性に配慮しつつ、チャンスの平等性を確保する」ということです。つまり、ジェンダーや国籍などの属性による差別をしないで、少なくとも、同等のチャンスを与えるということです。日本企業には足りないのではないでしょうか。なかなか難しいですね。スタートラインを、属性を超えて同じにしようという事が必要かと思います。
異文化経営は海外の経営から起こりまして、ダイバーシティ・マネジメントも企業内の属性を超えた活用なんですが、行きつくところは、属性を超えて人を活かす、異文化力を活かしていく、という事であると思います。
国際競争力のある人というのは、色んな人がいると思いますけれども、アメリカのリチャード・フロリダという人は、Talent、Technology、Toleranceがある地域は非常に伸びていく、という事を言っています。Tolerance(寛容性)というのはつまり異文化力ということです。これがある地域が今後伸びていく、ということで、東京もこれに入っています。これはオースティンとか、たとえばニュージーランドのいくつかの都市なんかも入っています。世界の発展の様子を国ではなく、都市で見ていくというのも、非常に面白いんじゃないかと思います。

もう一つご紹介したいんですが、アメリカとチリと日本の、職場における3つのタイプの社員のイメージの比較調査をした話です。これは若干語弊があるかもしれませんが、職場には「必要不可欠の社員」と「普通の社員」と「問題のある社員」の3種類がいるということで、この3種類の社員はどういう人かというのを、アメリカとチリと日本で、MBAの学生にそれぞれ形容詞をつけてもらったんです。
そうしましたら、「必要不可欠な社員」というのは、だいたい同じように良い形容詞が付いてきます。「信用できる」とか「リーダーシップがある」とか「先駆的である」とかですね。これは3つの国でまったく変わりがないです。「問題のある社員」も同じように、「トラブルメーカー」「ゴシップ好き」「無責任で裏切る」とか否定的な言葉が出されます。
そして「普通の社員」をどう見るかという事なんですけれども、アメリカの場合は、「怠惰」「追随する」「無関心」といったように、ネガティブな形容詞が多いんですね。チリの場合も「勤勉だ」「責任感がある」などもありますが、「コミットしない」「内向的だ」とかネガティブな形容詞も並びました。
日本になりますと、「普通の社員」のイメージがすごく良いんですよね。「信頼できる」「友好的」「勤勉」「順応できる」というような言葉で表されています。普通の社員が良いという幸せな日本です。これは凄く良いと思うんです。
でも、本当にこれで良いのでしょうか。どうでしょうか皆さん。日本では普通の社員が良い、これは良いと思うんですよね。学問的にはホフステッドのcultural dimensionと一致します。集団主義という事なんですが、出る杭は打たれる、というムードがあるかと思います。
震災の後は、「普通」は素晴らしいと思いました。みんながしっかり対応した現場の強みは素晴らしいですね。でも「普通」だけではリーダーが育たないという事でもあると思います。それ以上を目指そうというcultureが、やはり戦後、欠けていたような気がするんです。これからの日本には信念を持ったリーダー、揺るがないリーダーが必要ですね。
もっと中間層の方に、人を引っ張っていく存在になってほしいですね。本当のエリートというのは、人の痛みが分かる人です。自分に厳しい人だと思うんです。そこには異文化力が必要です。特に日本は、内と外を分けますよね、内の中ではお互いに非常に配慮するんですが、どうも外には厳しかったりします。この内をもう少し小さくしたらどうかと思います。内は必ずあるんですけれど、外を強くするというのが、異文化力を付けていくというんですね。

さて、中間層を上にあげるためには、「Why」「なぜ」という問いかけをする教育が必要ではないでしょうか。「なぜ」「どうして」を追求することで、人を引っ張ってリードする力がつくのですね。そして成果をあげていくんです。多様性は面白い、世界観を持とう、という教育、思考を活性化していくということです。どんどん海外に出して、留学経験のあるバランスの取れた人を積極的に採用していただきたいものです。
サムソンの人に聞きましたら、韓国は、だいたい7年で大学を卒業するということです。まず4年の課程があって、2年は兵役で、1年は海外、合わせて7年で大学を出るというんです。そして企業も7年だからと言って、3年遅れとして扱ったりはしないわけです。留学をプラスととらえています。
台湾のある企業では、たまたま非常に優れた人がグローバルに活躍できる人だったと言います。グローバル人材という人を狙って採っているわけではないんだけれども、結局、企業をリードしていく人を全社的に見ていくと、結局はその人がグローバル人材としての能力を持っていたということです。普通の人がそうなっていくということですね。普通に仕事をしていって、企業のリーダーがグローバル人材になっているというわけです。
今の日本の場合、どうしても一部の特殊な人としてグローバルリーダーを育てよう、グローバル人材に投資しようという感じなんですけれども、特別な人ではなく、日本の多くの人が、少なくとも人口の10%くらいの人がグローバルに通用していく人になる必要があると思っています。

3.11の後には日本の良さというものを私も感じました。日本の良さは何なのでしょうか。今日は多少厳しいことも言いましたが、日本には良いところが沢山あると思います。たとえば「バランス感覚」が日本人は素晴らしいと思います。自分のことだけを主張するのでなく、周りの人のことも考えて、周囲に配慮するという能力です。一方でスピード感を持って対処していくのが弱いところでもあります。また個人として活躍するにはどうしてもまだ、弱さを感じます。出る杭を打つのではなく、出る人はどんどん出す。わがままとか礼儀正しくないとかいうことではなく、礼儀は正しい、自分を律することは出来るけれども、自分の意見をきちっと主張できる人です。そういう人をどんどん育てていって、その人たちが社会の中心になるような社会、一方で今のような住みやすさのある日本を大切にしていく・・皆さんでそうできたらいいと願います。

馬越恵美子(まごし えみこ)

馬越恵美子(まごし えみこ)

・所属・役職
桜美林大学 経済経営学系 教授
筑波大学 客員教授

・略歴
上智大学を卒業し、慶應義塾大学大学院で経済学修士、そして、異文化経営論で博士号を取得している。
現職のほか、 異文化経営学会会長、国際ビジネス研究学会理事、日米協会評議員、戦略経営協会評議員、などを務め、講演や執筆活動を幅広く行っている。
長年、「NHKラジオ・ビジネス英会話・土曜サロン」の講師として活躍した経験を持ち、えみりん先生として親しまれている。
最近では、英語落語やジャズボーカルにもチャレンジしている。
 

・著書・訳書など

『NHKラジオ ビジネス英会話 土曜サロン ベスト・セレクション プレミアム』(DHC、2011)

『ダイバーシティ・マネジメントと異文化経営』(新評論、2011)

『異文化経営論の展開』(学文社、2000)
 

馬越恵美子氏オフィシャルサイト http://www.emagoshi.com/index.html

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