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「食の安全と社会的起業」(3)

大地を守る会会長 株式会社大地を守る会 代表取締役社長
藤田 和芳

 まあ、そうはいっても、日本の食糧自給率は40% です。40%で本当にいいのかと私は思います。今回、キューバに行く前にメキシコに寄っていったが、昨年メキシコではトウモロコシや小麦の値段がすごく上がり、食糧の不足とかでデモが起こっていた。ブラジルでもデモが起こっていた。バイオエタノールのアメリカの政策によって、トウモロコシとか小麦とかものすごく値段が上がりました。フィリピンとかギリシャとかでは暴動も起こったと伝えられるほど、去年は食べ物の不足が世界中で起こったわけですけれども、そういうことを横目で見ていても、食料自給率40%という数字に対して、国民も政府も危機感がないと私は思います。
 
 先進国で最も食料自給率が低いといわれているのに、なかなか食料自給率が上がらない。まさに食糧危機みたいなのが一度くれば、どんなに大きな打撃になるだろうと思うが、政策は打たれていないわけです。でも、世の中は明らかに、例えば地球温暖化の問題とか、世界の耕地が砂漠化するとか、あるいは農地が工場の土地に変わっていくとか、いろんなことから考えても、食べ物は不足する方向にいく。何よりも大きいのは、人口がどんどん増えている。このように世界の食べ物が不足することが目に見えているのに、食料自給率が40%ということにすごく私は危機感を感じる。
 
 数年前、前のクリントン政権時代の副大統領だったアル・ゴアさんという人が作った「不都合な真実」という映画が日本中で上映されました。日本中で70 万人ぐらいの人がこの映画を見たと言われ、本も出ましたのでご承知の方もおいでかと思いますが、この映画はゴア元副大統領が地球温暖化の問題を捉えて、このまま温暖化したら地球がどうなるのか、人類はどうなってしまうかを科学的なデータを駆使して、問題点を説明する映画でした。今、私が申し上げたいのは温暖化の問題ではなく、ゴアさんが最後のところに登場して、次のように言うんですね。ゴア元副大統領は、たぶん1947年ぐらいの生まれの方だと思いますけど、
 
「私の生まれた年に世界の人口は20億人でした。この20億という人口に到達するまで、人類は一万世代をかけました。」
 
と言うんですね。一万世代というのは、一世代が20年とか30年だと計算しても、20万年とか30万年という気の遠くなるような長い年月をかけて人類は20億人の人口に到達した。
 
「私は今、還暦を迎えますけど世界の人口は65億人になりました。」
 
で、
 
「私がもし、皆さんと同じように神に許されて平均年齢まで生きることができたとすると」
 
ゴアさんは多分2025年ぐらいを想定していたと思うんですけど、
 
「世界の人口は95億人になると言われています。」
「これは私が言っているのではなく、科学者がそう言っているのです。私が生まれたときは20億人、私が死ぬころには95億人。」
「たった一世代で5倍近くも人口が増えるんです。」
 
と言って、
 
「世界のエネルギーはどうなりますか、世界の環境はどうなりますか、世界の食料はどうなりますか。」
 
と投げかけたんですね。
 わたしはエネルギーや環境のところは飛ばして、「食料がどうなるんですか」というところにびりっときたんですよ。本当だと、もう65億人とか95億人、たった一世代でそうなって、しかも自分の子供とか孫の時代にはもっと加速するかもしれない。こんな時代に、本当に食べ物が足りなくなる時代にわずか40%という自給率。どうしてこんな平気な顔をしていられるかと思ったんですね。
 
 しかし現実には、日本の耕地面積というのは野菜や米を作れる耕地面積は470 万ヘクタールあります。このうち、耕作を放棄している耕作放棄地と呼ばれている土地が約39万ヘクタール。耕作放棄地というのは、自分の息子が東京や都会に行ったり、高齢化したり、誰もこの畑を耕せないというので、数年以上にわたって何も作っていない田んぼや畑のことです。これが39万ヘクタールぐらいある。このほか不作付け地というのが、減反とか、去年まで作ったが今年たまたま奥さんがぎっくり腰で畑ができなくなったというような土地で、これが20万ヘクタールある。つまり、39万と20万で60万ヘクタールは何も作っていないんですね。耕地といわれている面積の14%ぐらいは何も作っていないという状態になっているわけです。世界中で8億5千万人ぐらいの人が深刻な飢えで苦しんでいると言うのに、日本は作ろうと思えば作れるのに、自分のところの田んぼや畑はネズミの巣にして、海外から食料を入れているわけです。
 
 安いから、安ければ海外から持ってきてもよいという、これが市場原理だとかグローバリズムだとか言っているわけですが、しかし、われわれの子供とか孫の時代になって、よそのどこかで戦争が起こったり、食糧危機みたいのが起こった時に、今と同じように世界中に出かけていって、金さえあれば、いくらでも買ってこられるんだという環境が残っているかというと、飢えが始まったらそんなことは絶対無いと思いますね。今の北朝鮮と同じようなことが日本の国に起こるかもしれない。
 つまり、その時に生産基盤がないとか、農業をやる技術がないということになった時にキューバのようにカストロにように大号令をかけてですね、庭にもプランターにも屋上にも野菜を作れ。公園のコンクリートもはがして野菜を作ろうという風にすれば追いつくかもしれません。
 しかし、日本は1 億2千万人ですからね。それが自給率が上がって、食料が潤沢に流れるようになるまでにものすごくたくさんの人達が苦しむことになるでしょう。そういうものを日本は抱えながらやっているんだと思うんですね。日本の農業をやっている人の農民の就業人口は約300万人ぐらいいるんですけど、そのうち、65歳以上のひとが6割。6割が65歳以上なんですね。ですから、この人たちがあと10年がんばっても、75歳ぐらいになれば農業をやめるでしょう。でも、新しい若い人たちが、この今と同じように農業に就かないと、10年後には180万人ぐらいの人が農業をやめるということになりますからね。300万人のうち180 万人の人が75歳以上になって農業をやめているという計算になります。ですから、今、日本の農業に手を打たないと将来に大きな禍根を残すと私は思うんです。
 
 それでもまだ政治家の一部の人たちとか、学者の一部の人たちは、日本の農業はもっと頑張らないといけないという人たちがいるんです。もっと規模を拡大して、もっとコストを下げて国際競争力をつけろと、日本の農産物は高すぎる、日本の農家の人たちは努力をしていないと言い続けているわけです。
 でも、私は最近、農家の人たちのところを回って、「そういう話にはもう乗るな」といっております。もうグローバリズムというか、価格競争から降りようと。価格競争を強いられるほど、日本の農村は苦しくなるだけだと。
 日本の食料自給率は40% ですから、残念ながら計算上はですね、60%の消費者は、食べ物は安いほうがよいということで輸入農産物の方に傾いているわけですね。直接野菜を買っているわけではなく、加工食品という形で食べている場合もある。加工食品のほとんどの原材料は、輸入農産物をつかっています。つまり60%の人たちは、外国の農産物を食料としているんです。
 でも、価格競争をして本当に勝てるのかというとですね、例えば、東京の大田区の市場にいっても日本の農家がつくるキャベツは、1 個どんなことがあっても140円以下だったら農家の人はやっていけない。ところが、大田市場では、1個40円の中国産のキャベツが入ってきている。それから、納豆や豆腐、味噌の原料の大豆ですけど、日本の農家が作る大豆は60kgあたり2万6千円ぐらいですね。しかしアメリカやカナダからくる輸入大豆は、 60kg3600円です。もう、数字上でどんなことをいっても勝負にならない。それから、加工食品を作るときに味をかえるために生姜やにんにくを使ったりしますけど、生姜だって、高知県産の生姜は1kgあたり150円ぐらいするところを、中国産の生姜は1kgあたり7円。
 それから、にんにく、今にんにくは値上がりしてますけど、青森県の田子というところでできるにんにくなどは、一個125円ぐらいしますけど、中国産のにんにくだと一個25円ぐらいです。これも全然勝負にならない。
 
 私はグローバリズムという名のもとに、農産物の価格競争というか、世界中に安い農産物が次々と出てきているけど、世界市場で安い農産物の価格を決めている潮流はたった2つしかない。
 1 つの潮流はアメリカのように、広大な農地でセスナ機のようなもので種を蒔き、巨大なコンバインで収穫するというような巨大農業ですね。穀物などは主に、こういう農場で作られていくわけですけれども、巨大な農産システムで生まれてくる穀物のようなものに 日本の農業はどんなことをしても勝てません。価格競争でこれ以下のものをガンバレ、ガンバレっていってもそういう価格を市場に提供することは日本の農業はどんなことがあってもできない。
 もう一つの潮流は、アジアとか途上国の貧しい国の人たちが作り出す農産物です。自分の身を削る様にして環境汚染を厭わず、重労働も厭わず、しかも、社会保険とか医療費とか、教育費とか、そういうものを日本の農家に比べたら、もう月とスッポンとか天と地ほど違うような、そういう貧しい国の人たちが作り出している農産物は、これもまた世界で最も安い価格を市場で提供できるわけですね。
 人件費でも例えば30分の1だとか 土地の値段も70分の1というような所から出てくる農産物と日本の農産物が同じような形で同じように市場に出てきたら、勝てるはずがないんですよ。
 
 キャベツ40円と140円では消費者の人たちは同じような形をしていたら、40円を買うわけですね。ましてや 加工業者は形が見えなければほとんど安い輸入農産物を買うわけです。
 つまり何かの政策がないとこの環境は変わらないですね。こうして農家は価格競争でやぶれて、農業を続けられなくなってしまう。若い人たちが農業に就かないというのはここに原因がある。
 精一杯がんばって、都市の消費者の人たちが日本農業を守んなきゃいけないとか第一産業を守んなきゃいけないわねっていってガンバッテガンバッテ、で、しかも、安全なものとかいいながらがんばってやって40%ですよ。
 政府の政策の正しさでそうなっているわけじゃなくて、そういう別な要素が日本の自給率を支えているんだと私は思いますね。
 ですから 農家の人たちには もう価格競争からは降りて。そういうんじゃなくて、もっと40%と思われる人が何を望んでいるのか考えようと。安いだけでなくて別の事を望んでいる。安全性とか、おいしいとか、新鮮とか、顔の見える関係とか、そういう消費者が望んでいる農業に変わっていこうと言うことにしています。
 安穏と農薬や化学肥料を使って画一的農業をやって、価格競争に打って出て、それで負けていくよりかはですね、消費者の人が何を望んでいるのか、望んでる様な農業に転換する事で生き延びて行こうと、私は農家の人達に言っているわけですね。
 
 しかし、私はこの日本の農業を守ろうとか第一産業を守ろうとかいうような事をずっと色んなところで言っているんですけど。しかし、なかなかそういうことが若い人達に伝わらない。
 例えば昔の言葉で身土不二(しんどふじ)というなるべく近くの物を食べるという言葉がありますけど、身土不二という言葉を最近の若い人たちはほとんど知らない。
 最近少し流行ってきた地産地消(ちさんちしょう)というような言葉もですね。地域のものを食べて地域で消費しよう、そういう言葉ですが、地産地消という言葉もなかなか若い人達に分かってもらえないですね。
 なぜ、国産のものを食べるのが大事なのかとか、なぜ日本の農業を守るのが大事なのかという事が、なかなか運動として力がついていかないことにもどかしさをずっと感じてました。
 それで、最近思いついたのが「フードマイレージ」という言葉です。フードは食べ物、マイレージは距離、食べ物の輸送距離のことをいうわけですけれども。考えてみたら日本の輸入農産物というのはアメリカやヨーロッパとかそういうところから船とか飛行機で60%も日本に入ってきているわけですね。膨大な石油を使って。飛行機とか船で入ってきているのなら、どれだけのCO2を吐き出しているのだろうかと。そう思ってる時に、小池百合子前環境大臣が、クールビズという事を言い出しました。
 
 日本政府は京都議定書の議長国だった事もあって、ことのほか地球温暖化の問題には熱心です。それで沢山の予算をかけてですね、地球温暖化防止のためにさまざまな政策を打ちました。
 颯爽と登場した小池環境大臣は、クールビズというのは、夏の暑い日にネクタイを外して、エアコンの温度を28度以上にするというそういう運動を提起したんですね。
 それで、車に乗らないようにしよう、公共機関を使おう、電気を1時間消そうとか、お風呂の水で洗濯しようとかいうことをさまざまに呼びかけて、地球温暖化の問題をいろんなところでアピールしました。
 まあ、もう年寄りから小さな子供まで、地球温暖化という言葉を知らない人がいない。しかも、CO2を削減するということも、皆とりあえずは学校でも学ぶし家庭でもお母さんたちがそういう話をするので、なるべく電気を大事にしようね、とかいう事が会話の中に出てくる様になりました。
 
 で、私はそれに乗ろうと思ったんですね。「フードマイレージ」というのを使って食べ物の世界でも地球温暖化防止にも役に立つ貢献する事ができるんだ、というふうに言ってしまおうと。ということで、CO2 100グラムを表す単位を仮にですね、1ポコという「ポコ」という単位を勝手につくったんです。
 「ポコ」っていうのはイタリア語でちょっとずつ、少しずつという意味ですけど、まあ、100グラムのCO2を表す単位を「1ポコ」っていうふうに決めて、日本の国内のいろんな食べ物を全部ポコ表示で表現するようにしました。
 例えばですね 豚肉200グラムを今までスーパーマーケットで輸入品を買っていた人が国産の豚肉に代えると 0.7ポコであるというふうに。これはちゃんと計算したんですけど、つまり75グラムCO2を削減することができるんですね。
 豚肉の場合は例えばデンマークからもってくるわけですけど、デンマークからもってきて その距離と使った石油の数とそれから国産であれば長野県の豚を持ってきた場合のその距離と石油の量というのを比較して、で 75グラムCO2を豚肉200グラムを国産に換えると75グラムで0.7ポコ 75グラムCO2を削減できるという数字をつくったわけです。
 これは 農水省が出しているデータを元にして全部数字を作ったわけですけど豆腐一丁は 国産大豆を、今まではアメリカ産の大豆やカナダ産の大豆を使っていた豆腐を、国産の豆腐に換えようって事でスーパーマーケットで国産の豆腐に換えるとですね、豆腐を国産に換えるだけで、豆腐一丁で1.59ポコですから159グラム、CO2を削減することができます。
 アスパラガス30グラム1本だと 国産に換えると340グラム、3.4ポコです。340グラムCO2を削減することができます。こうやっていろんな食品をずーっとだしました。
 
 ところがですね、あれだけ熱心に呼びかけられたクールビズっていうのは丸1日やって いくつCO2を削減するかっていうと、80グラムなんですね。0.8ポコ、80グラムCO2を削減することができる数字がクールビズ丸々24時間やった数値です。
 そうすると豚肉を200 グラム国産に換えただけで なんと1日半クールビズをやったこと以上の効果です。豆腐一丁を国産に換えるとですね、約2日間クールビズをぶっ続けでやったことと同じこととなります。アスパラガスにいたっては 4日間以上もクールビズをやったことと同じになります。という数字が出てくるわけですね。
 テレビを1 時間消すというのも小池百合子さんは一生懸命いっていました。テレビを1時間消すというのは0.1ポコですから10グラムですね。CO2をテレビ1時間消すと10グラム削減できるということになるわけですけど、先ほどの豚肉、豆腐、アスパラに置き換えると豚肉を国産に換えると、15時間テレビを消したことと同じだ、豆腐一丁でも15時間、アスパラだったらなんと34時間もテレビを消したことと同じになるということですね。フードマイレージを前面にだしながら、確かにテレビを消したりネクタイはずしたり あるいはお風呂の水で洗濯したりということも大事だけれども、毎日の食卓で何を食べるかということだけで十分に地球温暖化防止ということに貢献できるよと、子供たちもそういう風に今日のトマトはだれが作ったのとかですね、あるいはこのキャベツはどこのキャベツかということを考えながら、そのことで地球温暖化防止ということに十分貢献できるということの運動にしようと。若い人たちは環境問題とか農業問題とかいうことをいうと何か我慢したりですとか、そういうことの運動だということにちょっと毛嫌いする傾向がありますけど、我慢するとか苦しさを容認するとかそういうようなことだけじゃなくて、これからの日本の農業を大事にしようとか、国産のものを食べようということはむしろこっちのほうがいいんだよっていうような、もう少し軽いノリでですね、社会的運動をするということがあってもいいのではないか、というふうにおもって、このフードマイレージという道具を提案することにしました。
 
 今大地を守る会も、食べ物を買ってもらっている人たちにポコ表示を「あなたは何ポコ貯まりました」というふうに表示をしていますけど、今年中には、去年から準備していたんですけど、幾つかの生活協同組合や団体と一緒にこのフードマイレージという運動を前面展開をする予定になっています。
 今参加する団体の会員とか組合員を全部合わせると180万世帯の人たちがフードマイレージを実行してポコを貯めることになります。
 今、我々が議論しているのは180 万もの人たちがポコを貯めはじめるとですね、スーパーマーケット例えばイオンさんとか、レストランとかそういうところに呼びかけてもいいねって思っているんですけど、まあ、とりあえず、180万くらいの人たちがそういう行動を起こし始めると、ひょっとしたら いろんな企業の人たちに相談することができるかもしれない。
 例えば、3000 ポコためるとトヨタの自動車がいくらか安く買えるとか、三越の商品と交換できるとかということになったらいいですね。交換比率は一律でなくてもよいと思います。海外の排出権を購入するだけでなく、ポコを自社製品と交換することで擬似的に排出権取引ができたと考える。そしてこのことが国内の農業を支援することにつながる運動にしたいと思います。それが企業の商品と交換できればよいと思います。いまは単にポコを貯めるだけですけれども、ある程度の量を集めれば企業を巻き込むことができます。一斉に開始する時には、色んなところでご協力いだければと思います。
 
 それと冒頭でご紹介がありましたが、6 年前に「100万人のキャンドルナイト」というイベントを始めております。100万人のキャンドルナイトとは、夏至の日に午後8時から10時の2時だけ電気を消して、ローソクなどの火の明かりでスローな時間を過ごしてみようというものです。2000年にブッシュ政権が登場し、それまでのクリントン政権では抑え気味だった原子力発電を、ひと月に一基建設しようという政策に転換し、アメリカやカナダのNGOが電気を消して抗議をし、日本でも「ナマケモノ倶楽部」というNGOが同様のことを行っていること知り、これはおもしろいと思い、何か市民運動にできないかと考えたのがきっかけです。はじめはイラク戦争反対、原発反対などという目的を考えていたところ、若い人から「運動の目的を上から押しつけられるとイヤだ」との声が上がり、それなら電気を消す理由は自分で考えましょうという発想になりました。ある人は子供に本を読んであげる、ある人は家族のことを考える、ある人は原子力のことなど、とにかく2時間電気を消して、生き方を考える時間にしたい。当時環境省にも呼びかけたりもしましたが、こんなにうまくいくとは思いませんでした。100万人というのも、多い参加といった意味ぐらいで考えていましたが、ふたを開いてみると初年度500万人が参加してくださいました。それ以来数百万人の参加が続き、昨年は700万人が参加したといわれています。東京タワー、ベイブリッジ、札幌時計台、沖縄首里城それからコンビニエンスストアなど15万カ所が電気を消しました。若い人を含め、電気を消して、考える時間を創ってもらいました。
 
 農業問題はともすると霞んで見えてしまいがちですが、先も申し上げましたが、天敵を活用するなどといったことなど目線を変えれば実は先端技術でもあります。ですから農業に関する運動も最先端運動なのだと思います。
 大学で講義する機会がありますが、環境や農業問題、特にフェアトレードなどに関心をもつ若い人が多く、そういう問題に目を輝かせて質問してきます。大地を守る会では東ティモールのコーヒーを輸入して販売していますが、売上の1% を地元の小学校に寄付しています。南アフリカでも同じことを行なっていますが、日本から主婦が現地を訪ねると、小学校の子供のお母さんの70-80%がエイズに感染してしまっていると聞いてショックを受けたなどと言う話を若い人に聞かせます。そうすると多くの学生さんがそういった、環境、社会問題に関わりたいといってきます。また大地を守る会に入社したいという学生にも、農村で農業をやりたいという人が多く、今の若い人はダメだといつまでも言っているのではなく、よく見ると、しっかりした人が多く育っています。むしろ彼らがやりやすい道、環境を創ってあげることが大切です。
 私は民間の立場で日本の農業をいかに守るかにとり組んでいきますが、政治に携わる人は、是非日本の農業をどう守るかを考えて頂きたいと思います。 
 
 
(おわり)

藤田 和芳

藤田 和芳

・所属・役職
大地を守る会会長、株式会社大地を守る会代表取締役社長。アジア農民元気大学理事長、100万人のキャンドルナイト呼びかけ人代表、ふるさと回帰支援センター理事、食料・農林漁業・環境フォーラム幹事、日本NPOセンター評議員。
・略歴(『ダイコン一本からの革命―環境NGOが歩んだ30年』著者紹介より抜粋)
1947 年岩手県に生まれる。食と環境のつながりにいち早く注目し1975年、環境NGO(市民団体)「大地を守る会」設立。日本で最初に有機野菜の生 産・流通・消費のネットワークづくりをしながら、経済合理化を善とする文化状況に異を唱え、さまざまな運動を展開する。1977年には社会的起業のさきが けとなる「株式会社大地(現・株式会社大地を守る会)」設立。ロングライフミルク反対運動、学校給食運動、「100万人のキャンドルナイト」、「フードマ イレージキャンペーン」など、市民参加による提案型の運動を着実に進めている。
・著書・訳書など
『ダイコン一本からの革命―環境NGOが歩んだ30年』藤田 和芳著、工作舎
『農業の出番だ!―「THAT’S国産」運動のすすめ』藤田 和芳著、ダイヤモンド社
『いのちと暮らしを守る株式会社―ネットワーキング型のある生活者運動』藤田 和芳共著、学陽書房

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