事業やプロジェクトの成功、失敗の原因は何か?
組織パフォーマンス向上「グローバル・ビジネスリーダー」
これまでかかわってきたご自身のプロジェクトや事業の成功事例と失敗事例を、それぞれ3つずつ取り上げ、その原因をリストアップしてみていただきたい。10分ぐらいあれば、成功と失敗の原因は明確になるだろう。
失敗するプロジェクトは、規模が大きく、その期間も2年、3年と長いものが多く、成功するプロジェクトは、半年、長くて1年と短期であることが多い。失敗プロジェクトは一組織で行われることが多く、関連部門の巻き込みが不十分であり、組織と組織の間に多くの穴(放置された仕事)が多いのに対し、成功プロジェクトは、組織横断的なチームで、草の根レベルでしっかりとコラボレーションが行われている。失敗プロジェクトは実行する時間よりも計画を立てる時間が多く、さらには実行段階のフォローが全くないが、一方成功プロジェクトは、実行し、試行錯誤することから効果的な成功要因を見つけ出す。毎日の進捗を経営幹部がしっかりとフォローし適確なアドバイスをその場で出す。失敗プロジェクトは競争環境が変化しても、初めの計画を変えることなく進められ、その結果ビジネスの結果が出ないが、成功プロジェクトは目標やビジョンは変えないが、成功要因の認識やアクションのシナリオは常に柔軟に見直され、また新たなアイデアの発想も取り入れる。若い人や外部の意見も柔軟に取り入れる。
事業やプロジェクトのいくつかの失敗または成功要因の分析から言えることは以下のようなことである。
- 戦略計画とは単なる仮説であって、ビジネスの競争の現実の状況はまったく異なることが多い。
- しかも、資本主義経済の拡大、ネット社会化などにより市場競争環境は、過去よりもはるかにめまぐるしく変化する。
- 変化する市場競争環境では、戦略ビジョンや事業の成功要因さえ変化する。
- したがって、戦略ビジョンや成功要因が何であるかを常に考えなおし、同時にアクションのシナリオを描き直し、瞬時に行動を変えられるかが重要となる。
会社や組織だけでなく、私たち一個人も、過去の成功体験、過去と同じやり方を踏襲していては、いくら計画通りに、真面目に仕事を進めていったとしても、グローバル競争では全く通用しないのである。
それでは戦略ビジョンや事業の成功要因が頻繁に変化する環境で、成功するにはどのようなことが必要とされているのだろうか。ここでは以下の7つを挙げた。
①ストレッチで挑戦的な目標とビジョン(3年)を設定すること
②90日以内で具体的な成果が生み出される短期のゴールを設定すること
③計画に時間をかけず、今ある経営資源や権限で挑戦し達成すること
④市場競争上の緊急性が求められる厳しい環境づくり
⑤参加メンバー個人がプライドをかけて取り組むこと
⑥個人や組織の過去の習慣をポジティブに変革すること
⑦オープンなコミュニケーションとメンバーと経営トップの信頼関係を強化すること
ニューチャーネットワークスではこれまでも何度か紹介してきたように、この様な要因をおさえたプロジェクトを「ブレークスループロジェクト」として、300以上のプロジェクトに導入してきた。
ブレークスループロジェクトのような短期のプロジェクトは、「大きな事業計画やプロジェクト」とどのような関係なのだろうか。「大きな事業計画やプロジェクト」とは、例えば、「新規生産力の増強プロジェクト」「大型の新製品開発プロジェクト」「変革重視(Change management)の中期経営計画」「ビジネスモデルやポートフォリオ変革重視の中期計画」など、特に外部環境に影響されやすいものである。
大きな事業計画やプロジェクトでは、まず、中長期計画は、大きく大胆な目標設定、戦略ビジョン、戦略シナリオを作成する。膨大な詳細計画づくりは行わない方がよい。その詳細計画の実行が目的化され、環境変化を感知しなくなるためである。また計画にリアリティが無くなり、実行性が薄れるからである。この戦略策定はまさにトップマネジメントの仕事である。魅力のある戦略ビジョンを自らの頭で創造出来ないトップマネジメントは存在意義がない。またそれを現場に熱い情熱をもってわかりやすく伝えることが出来なければいけない。
そして次に、大きく大胆な目標と戦略ビジョン、戦略シナリオの「戦略的意味」を崩さずに「ブレークスルーゴール」を設定する。このブレークスルーゴールを設定するのは、管理職以下現場の社員の仕事である。「戦略的意味」をもったブレークスルーゴールとは、例えば、「インドネシアでの自社のシェアを現状の15%から3年後25%にせよ」という中期戦略ビジョンがトップから示されたとすると、ブレークスルーゴールとしては「90日間で、インドネシア、ジャカルタ地域で、主力3ディーラーでA製品の取り扱いシェアを50%にする」といったように、一機能だけでなく、また多くのステップの過程の一歩でもなく、戦略全体が包含された、しかし短期で達成可能なゴールに翻訳し直すことである。90日間のブレークスルーゴールを達成し、小さくても成果が出ることで
- 組織全体が成功を体験でき
- ビジネスやプロジェクトの成功要因が何であるかが明確になり
- 最終成果までのリードタイム、資源投入が行いやすくなる
- また新しい競争環境で戦う組織体質が出来ている
どうだろう。もしあなたが経営者であれば、90日間で大きな戦略のモデルとしてのブレークスループロジェクトの目標を達成したならば、その時点で初めて本気で3年間の戦略ビジョンに対して投資を考えるであろう。最終成果とアクションの関数が明確になるからである。小さくても意味のある実績ほど説得力のあるものはない。