
【緊急特集】トランプ現象は現代社会の「結果」。私たちはトランプ政権をどう理解するか
■現在のトランプ大統領の政策は1970年代からの「アメリカ中流階級の没落」がルーツ
1979年に出版された『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(エズラ・ボーゲル著)がまだ一世を風靡していた1980年代の終わりごろ、当時大学生だった私は、ゼミの担当教授から『ルージング・イット―アメリカ中流階級の没落』(R. C.イェーガー 丸山勝訳 新評社)を読んで感想を述べるようにと指示されました。
このころの米国は自動車やエレクトロニクスなどの製造業が衰退し、それとともに伝統的な中流階層は失業や所得の低迷に苦しんでいました。本書の内容はタイトルの通り、もはや親の代のような平均的な豊かさを得られなくなった当時のアメリカ中産階級の現実を描いています。その「平均的な豊かさ」とは、郊外に小さな住宅を買い、子どもを大学に通わせ、退職後は年に一度海外旅行に行けるという程度のもの。そんなつつましい「豊かさ」でさえ、中流層の多くは手にすることができなくなっていました。会社に突然解雇され、住宅ローンが払えず、賃貸住宅に移らざるを得ない。共働きでも生活するのが精いっぱいで、子ども自らが学資ローンを組まないと大学には行けない。そんな状況になっていたのです。
当時、日本では国民の約80%が自分たちを「中流」だと思っていましたし、私たち学生もほとんどが中流家庭の出身でした。そんな私たちがこの本を読んで述べた感想は、以下のようなものです。
- そんなふうに中流階級が没落したのは、アメリカという国が、多くの雇用を生み出す製造業を軽視した結果である。実際に米国製品の品質は低い。
- 日本も経済が成熟してくると中流階層が減少し、格差が生まれるのではないか。実際に土地の価格は高騰し、地方出身者と都市部出身者の間には既に格差がある。
それに対してゼミの担当教授は、「米国の中流階層の没落は、民主主義や自由貿易経済、ひいては社会構造全体を破壊する火種となる可能性がある。そのことをよく考えておくように」とおっしゃいました。
80年代から90年代初めのアメリカは共和党の時代です。レーガン大統領(在任:1981~89年)からブッシュ(父)大統領(在任:1989~93年)へ。この間、自由貿易を建前にしつつも、半導体、自動車、食料などの分野で日本に対する市場開放への徹底的な圧力がかけられ、円高誘導政策なども行われました。今の「米中冷戦」ほどではないにしろ、「日米貿易戦争」と呼ばれる期間が続いたのです。
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