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顧客経験価値重視の商品企画開発を実践するトレーニング「組織能力をアップさせる方法」第3回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

誰もが挑戦できる自由な商品企画開発の場を設定する

これまで何度も述べてきましたが、顧客経験価値ベースの商品開発の良い点は、社員自身を顧客と見立てて企画ができることです。従来の商品開発は、商品開発部門やマーケティング戦略部門の専門家の仕事と考えられがちでしたが、アイデア段階、コンセプト段階であれば、多くの社員の方々に参画していただくことが効果的です。

先に述べた商品開発のツールやプロセスが共有されていれば、アイデアやコンセプト企画などの上流の段階、または、PoCの段階で多くの方が積極的に参加可能です。顧客経験価値ベースの商品開発において、会社組織とすれば社員全員が何らかの形で商品開発に関わってもらうことが、とても重要なことです。生活雑貨メーカーのアイリスオーヤマは、常に全社員からアイデアを募集し、自発的にプロジェクトを組み商品企画に挑戦する仕組みがあります。小林製薬でも、パートの社員さんも含めて商品アイデアを常に募集しています。自転車の基幹部品や釣りのリールのメーカーのシマノでは、土日に自転車や釣りを楽しむ社員が多く、その体験が商品開発に役に立っていると聞きます。

このように独自の顧客経験価値を開発するには、社員をユーザーと見立て、年齢、立場に関わらず商品開発に気軽に参加でき、多様な意見を吸い上げる場を持っておくことが必要です。ただし、どのプロセスにも参加できるとはいえません。アイデア出し、商品コンセプト企画、試作品ができた段階でのPoCへの協力、発売前や上市後のモニターなどで消費者としての顧客経験価値の情報、データや改良アイデアなどは大変効果的だと思います。一方、商品化段階の機能試作や量産などのいわゆるエンジニアリングのプロセスは専門知識が必要で、多くの社員を巻き込むことはできません。関連した部門や専門知識のある人に限られます。

多くの社員を商品開発に巻き込むためは、いつでもご意見をくださいという形だけではなく、「場」を設定し参画してくれる人を集めるべきです。「場」が設定されることで、社員自身も「場」に貢献できるかどうか、自分の学びになるかどうかなどを判断しやすくなります。「●●商品顧客価値モニタープロジェクトメンバー募集。2時間×3回」といった感じの募集になるでしょう。

社員を商品開発のプロセスに巻き込むメリットは顧客経験価値重視の商品開発に役に立つだけでなく経営戦略、事業戦略としても効果があります。例えば、社会の大きな変化やそれに伴う市場動向の変化があった際に、会社は方向転換を迫られます。その際に、日頃から顧客視点を持ち、自社の商品に関わっていれば、会社の方向転換も理解しやすいと思います。顧客や商品のことは気にせず与えられた仕事だけをこなしているようだと、社会や市場の変化に反応できず、また反応するまでに時間がかかります。企業というのは環境変化にいかに対応するか、先取りして前に進むかで勝敗が決まるので、多くの社員が顧客経験価値や商品に常に関心を持っておくのはとても重要なことといえます。

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