顧客経験価値重視の商品企画開発を実践するトレーニング「顧客経験価値を創造できる人になる方法」第4回
顧客経験価値を創造できる人になるための7つの考え方とコツ③価値ある人的ネットワークを積極的につくり、活用する
新たな経験価値創造のためには、「人的ネットワークは重要な資産」であると認識することが大事です。アイデアやコンセプトは、一人だけの発想、考えから生み出されることは少なく、他者との対話から生まれることが圧倒的に多いからです。従って、新たな経験価値を創造するためには、自分にとって質の高いネットワークをいかに確保し、維持するかが大事になってきます。
①自分の得意分野、専門性を徹底して磨く
効果的な人的ネットワークをつくるには、まず自分の得意分野、専門性を磨き、それが他の人からみて魅力的なものでなければなりません。その魅力が突出したものであることが重要です。「○○ならあの人」といわれるようでなければなりません。そのためには長期間に渡ってその専門分野において徹底的に努力し続ける必要があります。
②専門分野の異なる人とつながる
特化した専門とは、他の複数の専門と組み合わさってはじめて価値や成果が生まれます。新たな顧客経験価値の創造にも、自分の専門以外の、異なる専門家とのつながりをつくることが大切になります。そのためには普段から異なる分野の専門家とのネットワークをつくり、必要に応じてアクセスし、対話する努力をしなければなりません。異なる分野は使う言葉も違い、価値観も異なりますから、時には利害が対立することもあり、対話はそう簡単ではありません。
重要なのは、目指すべき方向、理念をある程度合わせ、粘り強く何度も対話を繰り返し、新たな経験価値創造のための問題や課題を共有すること、その問題や課題の解決に各専門家が分野を超えた創発的なコラボレーションをし続け成果を出すことです。
③ネットワークのハブを持つ人と信頼関係をつくる
ネットワークを効果的につくるには、ネットワークのバブを押さえておけば、効果的なパートナーを見つけやすく、また関係構築も容易です。ネットワークのバブになる人や組織とは、経営トップ、業界のキーパーソン、大学や研究機関の研究者、シンクタンクの人や各分野のコンサルタントなどです。
ネットワークのバブを活用する上でもっと大事なのは「信頼」です。紹介してもらってもお礼の連絡もなく、さらにはその紹介先で周りにマイナスの印象を与えるようなことをしたりすれば、簡単に「信頼」は崩れます。ネットワークが人づての紹介なのか、SNSのグループでの接点なのかに関係なく、相互の信頼関係にマイナスになる行動をする人や、自分だけの利益に走り、Win-Winの関係を構築できない人は、価値ある仕事はできません。
④薄い関係のネットワークも大事にする
人間関係に関する社会科学的な研究「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」(ニコラス・A・クリスタキス、 ジェイムズ・H・ファウラー著 講談社)では、薄い関係のネットワークこそ情報交換の自由度が高く、大きな成果を生み出す可能性があると述べています。薄い関係のネットワークが、特定集団にこだわらない集団間のハブになる可能性があるからです。また職場や学校、親類などの濃い関係のネットワークは、利害関係が強固であるため、ある一定の規則にしたがった情報しか流れない傾向があると分析しています。
イノベーションを意識するならばこの薄い関係を重視することも重要なのだと思います。薄い関係をつくるには、適度な情報発信が必要です。おおよそ自分は何者で、何に関心があるのかをSNSやブログを通じて常に発信しておくのがよいと思います。適度な情報発信とは、あまり専門的過ぎず簡単で、多くの人が接点を持ちやすいということです。そういったトピックスをいくつか持っておくことがよいと思います。近年「雑談力」が話題になったもの、薄い関係の重要性を知る人が多くなったことと関係しているかも知れません。