顧客経験価値重視の商品企画開発を実践するトレーニング「顧客経験価値を創造できる人になる方法」第2回
顧客経験価値を創造できる人になるためには
さて、「顧客経験価値を創造できる人」はどのような人でしょうか。大変難しいテーマだと思います。最近でこそデザインシンキングなどの思考法も普及してきましたが、まだまだ未発達ですし、体系化も十分ではありません。また顧客経験価値もバーンド・H. シュミットなどによってある程度モデル化、体系化されましたが、その企画創造の方法や測定・分析方法などは確立されたとは言えません。
「顧客経験価値を創造できる人」に関しては、体系的に整理はされていませんが、スタートアップの経営者、社会起業家、新規事業を立ち上げた実務家を中心に、経験則的に、考え方やコツのようなものが見えてきています。ここではそれらをいくつか紹介したいと思います。
顧客経験価値を創造できる人になるための7つの考え方とコツ①自分の生き方、価値観を追求し、人からも学ぶ
前にも述べましたが、顧客経験価値を創造することとは、顧客にとって新たな意味を創造することや、意味を深めることです。
顧客にとっての新たな意味の創造や、意味を深めることとは、具体的に、これは自分が顧客の立場に立って「これは何の意味があるのだろうか?」と考えることです。そのためには自分自身が意味を感じ考える人になっていなければなりません。
自分にとって意味を考えることは簡単にいえば、自分が家族、友だち、同僚、知り合いといった人や社会、自然環境に対してどう働きかけるか、またどのようなベネフィットを受けるのかという関係性のあり方、方針のようなものを持つことです。例えば「地域の人と環境を大事にしたい」「個人でも職場でも楽しく良い関係を保っていたい」「文化、伝統を重視した暮らしをしたい」といった自分の生き方、価値観をできるだけ明確にすることです。
自分の生き方、価値観をできるだけ明確にすることは容易ではありませんが、身近な方法は、家族や親しい友だちなど周りの人が「いい考えだな」「いい感じになりそうだ」と共感してくれることを見つけることです。仕事や暮らしの中で、そういったことを積み重ね、自分自身の「感覚」「感情」「思考」「共感」をよく観察していけば、自分なりの生き方、価値観はだんだん見えてくると思います。
例えば、マスコミを通じて「単身高齢者が新型コロナに感染して、保健所にも連絡がつかない、命が危険にさらされても医師への相談も入院もできず、自宅で死の恐怖にさらされる」ということを知ったときに、もし自分や身近な家族がそのような状態に陥ったら、自分はどう考え判断するのかを「当事者意識」で考えみることです。当事者意識で考えることによって、命や健康に対する考えや、その命を守るための個人や社会のあり方、人権、その人権の背景にある倫理まで遡って考えることができます。
「自分ごと」として考えることで、それを支える自分なりの生き方、価値観が深まれば、たとえ問題や課題がすぐに解決しなくても、その本質が何かを認識でき、一応の心構えみたいなものができます。そういったことが別のテーマでも深いレベルで繋がっていって、意味を考える思考体力がついてくるのだと思います。