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「AI、IoTを前提にした商品アイデア発想」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第25回

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

商品とは何か?何を明確にすれば商品なのか?

「商品」の概念つまり「商品とは何か。何を明確にすれば商品なのか」は、ビジネスの種類、特性によって異なりますので、なかなか一般化が難しいのですが、インターネット、AI、IoTが当たり前になっていることを前提にすると、大まかに以下の4つのことに答えることだと考えます。

①基本機能

基本機能とは商品のコアの部分の機能(働き)です。基本スペックともいえます。清涼飲料であれば、味、炭酸、成分などで、エアコンなら対応するスペースの広さ、温度調整の幅、風量、風スイングの幅、除湿機能などです。基本機能はカテゴリーや社内で既に決められていると思われがちですが、何が基本機能なのかは、商品コンセプトを決定づける重要な要素ですので、慎重に考えなければなりません。例えば、イヤフォンであれば、ノイズキャンセル機能やBluetooth接続を基本機能にするのかどうかは、商品のコンセプトそのものに関わる話なので重要な決定事項です。

②付加機能

付加機能とはオプションで付けられる機能または、基本機能のように商品コンセプトを決定づける要素ではないが、あった方がよりよいといった機能です。例えば、エアコンであれば、風のゆらぎ機能や、フィルターの自動清掃機能のような機能です。

付加機能もまた基本機能同様に、対象機能を付加機能とするのか、基本機能に入れるのか、または商品からはずしてしまうのかの判断は、商品コンセプト企画上、簡単なことではありません。

③プラットフォーム

インターネット、AI、IoTを商品開発の前提にすると、その商品は必ずネットにつながり、ネットのアプリや、アプリを通じて他の商品・サービスと繋がり、より高度な機能を発揮することになります。またそのように他の商品・サービスとの連携によって自社の商品が購入、使用される切っ掛けにもなります。このように他の商品・サービスと連携する共通土台を「プラットフォーム」と呼びます。商品企画を行う際、どのようなプラットフォームを持つのか、または他社のプラットフォームを利用するのか、そのプラットフォームはどのような機能構成なのかを企画する必要があります。

④ユーザーインターフェース

ユーザーインターフェース(UI: User Interface)とは、顧客と商品の接点部分です。このユーザーインターフェース次第で商品の普及率は変わります。スマートフォンのアプリケーションやネットサイトで考えるとわかりやいと思いますが、ダウンロードして、使いにくいところがあれば、そのアプリケーションはその段階で使われなくなり削除されます。ECサイトでも、登録過程が複雑で面倒だと、その先に進まず利用の段階まで進みません。

ユーザーインターフェースは、商品やビジネスの特性によって全く違います。例えば遠隔医療のオンライン診断などは、自然な対話性が求められますし、レコーディングダイエットアプリであれば、データ入力と顧客のモチベーション管理が大事です。またスマートフォンはじめIT機器は、VR、ジェスチャー、視線入力などテクノロジーの発展、変化が早く、新たなユーザーインターフェース技術が次々と出てくるので、その変化を取り込むのは簡単ではありません。

もちろんユーザーインターフェースでは、アプリなどのITだけでなく、物理的な商品パッケージデザインやスイッチ、大きさや形などのデザイン等も大変重要です。サービスが商品の場合は、電話、ネット、対面などの顧客とサービスの情報接点部分がユーザーインターフェースです。

商品アイデアはどのように発想するのか

商品アイデア発想の元は、商品・事業戦略仮説で企画した、コアコンピタンス仮説、顧客経験価値仮説、市場イノベーション仮説、商品企画仮説の4つの仮説と、カスタマーエクスペリエンスマップで分析した顧客経験価値です。

具体的にはカスタマーエクスペリエンスマップをたどっていく中で、フェーズごとにあるべき顧客経験価値を実現させるための商品のアイデアを発想します。

商品アイデアは、顧客経験価値が生み出される「手がかり」部分を特に注意して発想することが大事です。「手がかり」とは、感覚、感情、思考、行動、共感といった視点での顧客経験価値の縦と横の文脈を創り出すいわば接合点です。そこをしっかり押さえた商品アイデアを出すことで、あるべき顧客経験価値が実現されます。

フェーズごとに出された商品アイデアは、基本機能、付加機能、プラットフォーム、ユーザーインターフェースというカテゴリーでまとめます。この段階で気を付けなければいけないのは、アイデアの実現性を意識しすぎることです。現段階では実現できないことも、開発課題として取り組み、ブレークスルーする可能性もありますので、この段階では理想の商品アイデアを自由に出すべきです。

商品アイデアを発想する際、商品アイデアだけでなく、顧客コミュニケーションや販売方法や情報提供、情報収集などビジネスモデルに関わるアイデアなども同時に出てきますので、アイデアが浮かんだ段階で記述しておき、後でビジネスモデル企画として整理すると良いと思います。

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