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BOPビジネス ~その基本から実践におけるポイント~

株式会社イースクエア コンサルティンググループ ディレクター
田村 賢一
■背景

日本でのBOPビジネスの認知度は、2010年のJICA、経済産業省など公的機関による支援の開始を一つの契機に、急速に広まりつつある。筆者も、2011年からナイジェリア・インド・バングラデシュ・ブラジルなどの新興国・途上国でビジネスの立ち上げに携わっているが、各国を訪れるたびにその発展のスピードと多様性に驚かされている。BOPビジネスのとらえ方も、当初の文脈であるBOP層を消費者としてとらえ、廉価な商品を開発・販売するという流れから、BOP層を事業パートナーとしてとらえ、ビジネスの設計段階から包含していく考え方が注目を集めている。
BOPビジネスの研究者であるスチュアート・L・ハート教授(コーネル大学)は、BOP ビジネスを実践する際の原則として、BOP層と企業との間で、共通の価値を「Co-Creation(共創)」することが重要であると指摘している*1 。BOPビジネスは、すでにある市場に既存の製品・サービスを投入するのではなく、新しい市場をBOP層と共に創出することが求められていると考える必要がある。

■BOPビジネスとは

BOPビジネスとは、主に発展途上国の、収入の低い貧困層をターゲットとした新たなビジネスモデルである。BOPとは、世界の所得別人口構成において、一人当たり年間所得が3,000ドル以下の底辺の層にあたる人々のことで、Base of the Pyramid(ピラミッドの底辺)の略語からBOPという言葉が生まれた。また、BOPは世界人口の約72%、約40億人とも言われている。BOPビジネスは2005年に米国ミシガン大学のプラハラード教授によって提唱され、その市場規模は約5兆ドルに上ると試算されている*2

世界の経済ピラミッド (所得別人口構成)
世界の経済ピラミッド (所得別人口構成)
World Resource Institute 、「The Next 4 Billions」(2007)に基づきイースクエア作成

■BOPビジネスの特徴

BOPビジネスの特徴は、「ビジネス(営利活動)と社会課題の解決の両立を目指す」という点にある。BOPビジネスを通じて、企業は、自らの利益や新たな市場開拓を追求しつつ、それと同時に、発展途上国の現地における様々な課題(水や保健衛生、教育や健康、生活インフラや生活必需品の提供、貧困緩和など)の解決に貢献していく。例えば、現地で求められているのは、単に貧しい人々に価格の安い粗悪な商品を売るといったことではなく、彼らの生活の向上に貢献するような商品やサービスを提供することになる。

BOPビジネスの特徴

BOPビジネスの特徴

■バリューチェーン全体にBOP層を取り込む

さらに、BOPの人々を顧客や消費者として廉価な商品・サービスを販売するだけでなく、生産や販売など現地のビジネスのバリューチェーン全体の中でビジネスパートナーとしてとらえて取り込んでいくことも重要になる。BOPビジネスでは、BOP層と共に共通の価値を作り上げる活動が必要になり、このような活動を通じて、貧困削減に継続的に貢献する取り組みとして注目されている。

<BOP層と作り上げるバリューチェーン(例)>

<BOP層と作り上げるバリューチェーン(例)>

■なぜ、BOPビジネスに取り組むのか?

BOP層の購買力の低さを考えると、企業がBOPビジネスを通じて短期間に大きな利益を上げることは容易ではない。また、企業が途上国に進出する場合、BOP層をターゲットにする前に、富裕層(Top of The Pyramid: TOP)、または、中間層(Middle of The Pyramid: MOP)をターゲットすることも考えられる。
このような状況において、なぜ、進出国でBOP層を対象にビジネスをするのか、といった目的を明確にすることは、社内からの支援を取り付けるうえでも重要なポイントとなる。

例えば、今後とも成長が見込まれる新興国・途上国において、BOP層の所得水準は今後数十年で大幅に向上し、購買力も高まると考えることができる。特に、BOP層の中でも比較的所得がある層を、次なるMOP層としてとらえ、先行して潜在顧客を開拓することは、企業の将来にとって重要な戦略といえる。

所得区分 BOP分類

所得区分 BOP分類

出典:World Economic Forum(WEF) 「The Next Billions: Unleashing Business Potential in Untapped Markets」の調査を基に、イースクエア作成

また、途上国の制約(社会インフラの脆弱性、貧困層の購買力の低さなど)を乗り越え、現地のニーズに応えるために、これまでと全く異なる発想で商品・サービスの開発を行っていくことは、企業にとって新たなイノベーションの機会となる。途上国に限らず、グローバルでの競争力向上にも大きく貢献する可能性を秘めている。

ここに挙げた理由は一部であるが、各企業にとり、なぜBOP層を対象に新規ビジネスを立ち上げるのか、という理由を明確にすることが重要となる。

■BOPビジネス成功に導く実践のポイント

BOPビジネスの実践において、パートナーとの連携は重要な要素となる。BOPビジネスにおけるパートナーは開発援助機関、マイクロファイナンス機関、NGOなど多岐にわたる。昨今のBOPビジネスでは、これらパートナーと個別にではなく、統合した形で連携し、事業を構築していくことが求められている。企業としては、これらのパートナーの特徴を理解した上で、連携方法を構築していくことが重要になってくる。特に、開発援助関係者の多くは、国連が掲げたミレニアム開発目標(MDGs)*3の達成を目標に掲げる。彼らが企業と連携を模索し始めたのは、1)従来のODAではカバーされない支援や投資の獲得 2)事業で利益を生むことによる開発効果の持続――の2点が理由だと考えられる。
一方、企業が開発援助関係者と連携することのメリットは、資金的支援を得ることもあるが、プロジェクトの信頼性が向上すること、現地の社会課題が把握できることなどが考えられる。ここで、以下にBOPビジネス実践における企業とNGOの連携事例を紹介する。

■企業とNGOの連携事例

リー・ジャパン株式会社は、特定営利活動法人ハンガー・フリー・ワールドと「BORN IN UGANDA ORGANIC COTTON」プロジェクトで連携を推進している。本プロジェクトは、ジーンズのメーカーであるリー・ジャパンが環境配慮への取り組みを積極的に行いたいとの思いからスタートしたプロジェクトである。本プロジェクトでは、ウガンダで生産されるオーガニックコットンを活用して製品を開発・製造し、その売り上げの一部を現地の井戸建設に寄付することで企業と地元コミュニティーがWIN-WINの関係を築いている。リー・ジャパンはNGOと連携することで、より詳細なウガンダの歴史や現地の様々な社会課題を知ることができたとしている。その対話の中から、現地での飲み水の問題、児童労働の問題を知り、井戸建設への寄付や調達における労働・人権の監査も実施するようになっている。この労働・人権の監査も児童労働問題に取り組む特定非営利法人ACEの協力の下で行っている。

NGOとの連携と言っても、企業の担当者からするとどのような団体とどのように連携することができるのか、悩むことが多い。連携の形も寄付や助成金といった経済的な支援から、専門家の派遣のような人的支援、共同事業による連携など多岐にわたる。そこで、「NGOと企業の連携推進ネットワーク」が推奨する「連携ガイドライン」*4 を紹介する。本ガイドラインでは、企業とNGOがどのように連携するべきかなど、その手順や契約に際して必要となる覚書のサンプルなどをまとめている。これから連携を検討している企業は参考になるのではないか。

■最後に

BOPビジネスでは、これまでと同じ手法は通用しない。これはビジネスを通じた開発課題解決への試みであるため、通常のビジネスでは対象にならない多様なステークホルダーのニーズに応える必要があるためだ。このような取り組みには、パートナーとの連携が重要であり、企業も多様なステークホルダーとの対話の中からパートナーを選定し、連携を築くことが求められる。

【注釈】
*1 BOPビジネス 市場共創の戦略
   テッド ロンドン (著, 編集), スチュアート・L・ハート (著, 編集), 清川 幸美 (翻訳)
*2 ネクスト・マーケット――「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 (ウォートン経営戦略シリーズ) 
    C.K. プラハラード (著), C.K. Prahalad (著)
*3 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs/about.html#goals
*4  http://www.janic.org/ngo_network/howto/guideline.html

 

田村賢一

田村 賢一(たむら けんいち)

■所属・役職

株式会社イースクエア コンサルティンググループ ディレクター

■略歴

監査法人系のコンサルティング会社にて、CSR関連支援業務、企業向けのISO14001導入コンサルティング、CSRやビジネススキルのセミナー講師を経験し、2010年にイースクエアに入社。BOPビジネスのフィージビリティ・スタディ実施支援、環境・CSR分野の教育支援、環境・CSR分野の各種調査等に従事。

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