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継続して結果を出す営業パーソンに共通すること ~営業ブレークスループロジェクト(1)~

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

■依然顧客の選別意識は高い

 事業や経営の出口である営業。国内外とも競争が厳しくなればなるほど「営業」部門に対するプレッシャーは強くなる。消費税率引き上げ前の駆け込み需要により活気をとりもどした日本国内市場であるが、ネットなどで情報武装化された顧客の選別意識は厳しく、競争は依然厳しい。今日までの取引関係も、明日は自社が指名されるかどうか解らない。開発、生産などどの職種も厳しいが、とりわけ営業という仕事は「売れる、売れない」の結果がはっきり出ると言う業務なのでプレッシャーはより高い。実際に営業のやり方次第で事業、会社全体の業績も大きく変わることが多い。
 営業部門の、会社業績を担うウエートが以前よりも高くなってきているせいか、ここ数年弊社に対してもコンサルティグプロジェクトや営業幹部の研修の依頼が多くなってきている。
その営業部門の仕事の中で、継続して結果を出している営業パーソンにお話をうかがうことがある。そのようなスーパー営業パーソンの方々には、業種、会社、タイトルを超えて「意外だ」と思える共通点がある。今回はそのスーパー営業パーソンの共通点に関してお伝えしたい。

■ビジョンを遠目に見つつ目先のことに全力投球

 スーパー営業パーソンは、目の前の案件、顧客に全力投球している。3年後、5年後までの中長期の詳細計画を持っている人はほとんどいない。今の案件で競争に勝って受注することに集中している。しかし「自分の所属する組織や会社をこうしたい!」と言った3年、5年のビジョンと、そのビジョンを達成する大きなシナリオは描いている。
 なぜ詳細計画は持たないのか?環境は大きく変化してしまい、計画があっという間に陳腐化するためだ。同時に前の案件を受注出来なければ、先が無いからだ。
 大きなシナリオは絶えず書き換えられる。3年後の目標、ビジョンを達成させるため、今現在の社内外の状況を考慮し、成功への道筋を書き直す。
 その一方、目先の案件への全力投球を通じて、自分自身の競争力を高めている。毎回の営業案件という、勝つか負けるかの厳しい本番を通じて、強い営業体質をつくり込んでいるのだ。他分野であるが、埼玉県庁の職員でマラソンのトップランナーの川内 優輝氏も、練習する時間があまりないため、毎回の競技本番で力をつけていると聞く。スーパー営業パーソンも同様である。念入りな準備をしたり細かな計画を立てたりするのではなく、目先の案件に全力を注ぎ、結果として、中長期に戦える営業力を高めているのである。

■常に結果から考える

 スーパー営業パーソンは、常に結果から考える習性を持っている。例えば「今年中に新製品をあと5億円分追加で開拓しなければいけない」という話がトップから出たら、すかさず、まずはその数字を顧客別に割り振って目標を設定する。受注可能性の高い顧客から、顧客にどのようなベネフィットをもたらせば受注出来るかを考える。その上でどのような提案をいつまでに行えばよいのかを考える。一方業績が良くない営業パーソンは、追加売上5億円と言う数字を漠然と眺め、自分ができることから積み上げ式で考えてしまう。「やれることを努力して続けていれば運よく目標が達成するかもしれない」と考える。しかし、環境変化が激しい昨今では、努力を積み上げていっても、そこには市場がなかったということが多い。手段が先になってはいけないのだ。積み上げ発想ではなく、結果を出すために何をするべきかを逆算して冷静に考えなければならない。

■詳細な戦略計画よりも行動を先行させる

 市場や顧客の状況は刻一刻と変化する。ライバルの動き、発言一つで顧客の意識がガラリとかわることも多い。そのような状況の中で、必要以上に時間を費やした戦略企画、計画はあまり効果的ではない。詳細な戦略計画を立てたとしても、実際の顧客状況とは全くかけ離れてしまう可能性が高いからだ。
 スーパー営業パーソンは、詳細な戦略計画よりも、行動を先行させる。動いて解ったことをベースに次の行動をとる。顧客の現場に行って、現状を自分の目で見て、担当者と話し、その上で結果を出すために必要なことは何かを自分で考え、判断する。人の話や過去のデータに依存しない。
 しかし現場訪問は時間のかかる方法だ。スーパー営業パーソンの現場訪問は極めて効率がよい。まず普段から頻繁に顧客の現場を訪問し、ホットなネットワークをつくっている。そして必要な場合、数多くの現場の中から、結果に直結するヒントが得られそうな現場をうまく選び出し、訪問する。そして自らからすすんで提案し、そして顧客の反応をよく読み次のアクションを考える。
戦略や次のアクションは事務所に帰ってきて考えるのではく、顧客の現場で、もしくは現場訪問直後の移動中に考える。問題意識が高いうちに戦略や次のアクションを考え実行の意志を固めることが効果的なのだ。
 P&Gジャパンでは、営業部門の上司との目標管理の目標設定を、顧客の店舗の棚を見ながら決めることもあるらしい。現場の様々な状況、雰囲気を上司と部下で共有し、必ず結果を出す意思を固めるのだろう。

■過去の常識にこだわらない

 スーパー営業パーソンの最大の敵。それは過去の成功体験、過去の常識である。過去にトップセールであった人が、すっかり変わってしまった市場で、過去のやり方で営業し、結果が全く出ないということはよくある。傍から見るとよくわかるが本人は気が付かない。
 人は過去成功した方法を何度も使いたがる。しかし冷静に考えると市場は常に変わっているのだ。過去の常識を破った方法を考えなければならない。
 過去の常識を意図的に破るために、結果を出し続けるスーパー営業パーソンは、トライアル・アンド・エラーを厭わない。どんな仕事にも1割から3割程度、新しいことを盛り込んでいる。その1割から3割はいわば個人の新規事業だ。どれが当たるかわからないが、市場の反応をそこから読む。そして千三つ(せんみつ)、つまり1000回に3回は効果的なアイデアが見つかる。
企業の新規事業の挑戦はすぐには結果に結びつかないが、新しいものへの対応力アップなど組織の成長力を高める効果がある。個人も同じである。常識を破るにも、常日頃から新しいことに挑戦していなければならない。

■目標の達成も長い成長の一過程と考えている

 スーパー営業パーソンは、目標を達成しても、ほっとして休まない。目標達成や一時の成功は、実は次の戦いの負けにつながっているかもしれないからだ。実際、こちらの受注で失注してしまったライバル企業は、じきに対抗策をとってくる。それを上回るものを持っていなければ、次の勝負では負ける。
スーパー営業パーソンは、そのような競争を良く知っている。だから目標達成を、連続した成長の一過程と考える。失敗してもそれは成長のための学習と考えることができる。
そのような人の仕事には終わりはない。永遠に競争の中で一生生きるというマインドセットが出来ている。その背景には、3年、5年の中長期の目標を超えた、その仕事に一生取り組むための明確で強い理念がある。理念が行動するための強い動機付け、つまり「なぜそれをやり続けるか」の原点になっている。だから一般常識では考えられない、粘り強さ、根気強さをもっている。

今回は営業部門で継続して好業績を出す人、スーパー営業パーソンに共通する特徴を5つ挙げた。冒頭にも述べたとおり営業は事業部や会社の出口であり、結果を出す厳しい仕事である。しかしながら業務特性は異なるが、研究開発や生産、開発設計、スタッフ部門も会社や事業の業績結果を担っているのは変わらない。結果が出る時間がすこし違うだけだ。そう考えると、今回取り上げた5つのポイントは、営業以外でも十分通用する考え方ではなかろうか。

次回はこのようなスーパー営業パーソンの共通する特徴をプログラムにした営業ブレースループロジェクトについてお話しする。

 

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