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ビジネス成果を生み出すために“ソールシャルな視点”に立とう

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

■あなたのビジネスはカーナビの無い車になっていないか?

 大型連休の自家用車での家族旅行。大渋滞が予想される中、もしカーナビゲーションシステムがなかったらどうなるでしょう。時折聞こえてくるラジオの渋滞情報と窓から見える渋滞状況だけが頼りとなってしまいます。今から100キロメートル進むのに3時間かかり、その後2時間後には渋滞が解消されることが事前にわかれば、割り切って途中のパーキングエリアで食事や買い物を楽しめるでしょう。
 今どきカーナビゲーションシステムのない車は少なくなりましたが、我々が携わるビジネスの世界では、カーナビゲーションシステムの様な視野で、刻々と変化する業界や市場、さらには社会システムの変化までをある程度見通した上で進めることが必要です。もしかしたら目の前の顧客の要求に応え、競合製品に追いつくことで精一杯ということが多いかもしれません。会社のために目の前の課題に対応することは重要ですが、それはカーナビゲーションシステムのない自動車で大渋滞の中を運転するようなものです。早急に何らかの改善が必要です。

■IoT時代では産業、業界の範囲を超えた視野と発想が必要

 パソコンやスマートフォンだけでなくモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)が話題になっていますが、IoTトレンドの最大の特徴は、個別の産業、業界を超えてモノの情報がビッグデータとして収集、分析され新たな付加価値がつけられます。つまり、あらゆるビジネスの変化は産業、業界を超えたものになると考えられ、広い視野と未来観が求められています。先ほどの例で言えば、カーナビゲーションシステムなしでの事業経営は成り立たなくなってきているのです。
 例えば最近バス事故が多く発生していますが、運転手の過酷労働と健康問題が原因と言われています。そうなるとバスを製造する大型自動車メーカーは、これまでの単にエンジンや車両など従来の車の範囲を超えて、ウェアラブルや非接触のセンサーなどで運転手の健康状態を測定し、そのデータを無線でバス会社の運航管理センターに飛ばし、常時モニタリングすることが必要になると考えられます。さらにはメンタルも含めたヘスルケアに関するビッグデータ解析が顧客に対する売りになってきます。今や自動車産業は、過去の産業や業界の範囲だけでなく、これまで一見関係の無かった運転手のヘルスケア分野の動向把握と将来に向かった具体的なアクションが必要となってくる可能性があります。

 

IoT概念とは

 

■広大な“ソーシャル”の範囲で、どう思考すべきか

 IoTの時代が進むにつれ、過去の業界の枠組みで事業展開することはリスクが高まります。つまり既存製品やサービスの改善を積み上げだけでは通用しない時代に入っているのです。ある上場企業の幹部の方が「QCD(品質、コスト、納期)」の発想でのコストと納期で顧客と取引していては話にならない。発想を変えたサービスを提案しないと生き残っていけない。しかし幹部も含め会社でそれを解る人がほとんどいない。」とおっしゃっていました。
 ではどうするべきか?弊社ではその解決策として「ソーシャルデザイン」という思考、発想法を活用しています。「ソーシャルデザイン」とは、自社の製品・サービスなどの事業を企画する前に、まずその事業を取り巻く周辺を社会全体の視点からその「ありたい姿」を描くことです。例えば、先程挙げたバス、トラック等の大型車両の次々世代の企画をするとすれば、「10年先の大型車両を活用した『運輸』の社会での役割と課題」という視点で議論を始めます。そこではCO₂を始めとする環境負荷の問題や、Eコマースの普及による荷物の急増、運転手の高齢化や健康問題、労働環境に関する規制、法律の見直し、鉄道、航空、船舶などの他の輸送手段との連携、さらには3Dプリンターなどを活用しモノを運ばず現地で製造してしまうシステムなどが議論されます。
 そういった広い社会的視点で一度議論した上で、自社の製品、サービスの役割、機能を考えます。そこでは過去の延長線ではない、将来からのバックキャスト思考で自社の製品・サービスを企画することになります。冒頭の例で言えば、一旦カーナビゲーションシステムで道路の混雑状況を把握した上で、何をするかを決めるといったことになります。
 視点が社会的となれば、膨大な情報、データの調査が必要で時間がかかると考えられがちですが、そのための効果的な方法があります。それは関連する異なる分野の人を集めテーマに関する議論することです。もし法規制も関係するとなれば、行政の方も参加していただく必要があります。

 

ソーシャルデザインに必要なバックキャスト思考

 
 分野を超えた人で議論するには3つの外せないことがあります。
 1つ目は、日ごろから関連する外部ネットワークを広げておくことです。いざ議論しようと思っても「相手を知らない。ネットワークが無い。」では何も進みません。常日頃から関連すると思われる様々な会合に参加し、ネットワークをつくり社内で共有し、何時でもアクセスできるようにしておかなければなりません。
 2つ目は、異なる分野の人で議論するテーマを設定することです。テーマ設定は参加者の問題意識が刺激されるものでなければ議論は弾みません。先ほど挙げたバスやトラックの大型輸送でいうと「あらゆるモノがつながるIoT時代の次世代大型輸送サービスのビジョンを考える」といった“未来のトレンド”(IoT時代)と“役割”(バスやトラックの製造ではなく“サービス”)を現在よりも2段か3段上に設定するのがよいと思われます。
 3つ目は、異なる人との議論できるマインドとスキルを持つことです。特にマインド面では“多様性を受け入れること”であり、スキル面では多様な意見をより創造的なアイデアやコンセプトにつくり上げていく創発的なファシリテーションスキルやメンバーとして議論するスキルです。
 以上の様なことを日ごろから意識しておかなければ、異なる分野の人と議論してもよい成果が出ません。

■議論の方向性は結局“人”

 社会的視点で議論するとなると、範囲も広く、かつ境界線も解りにくく、さらにはその構成要素も参加メンバーによっては変わることも考えられます。そういった中で正しい議論の方向性をつくるにはどう考えればよいのでしょうか。
 それは議論の方向性を“人”に置くことだと私は考えます。ビジネスの製品やサービスでも国や自治体の法規制やサービスでも、最終的には“人”にとってよいかどうかです。これはグローバルでも変わらないことだと思います。また“人”の概念には現在だけでなく、未来の人、つまり私たちが死んだ後の未来の人に対する責任も含まれますし、人が生命体として生きていくための自然環境も入ってきます。
 議論の方向性を“人”に置くことは、結局“自分の立場で考えたらそれはよいことか?”とある種主観的に考えればよく、知識の量に依存しないので、誰でも議論に入っていけると思います。そうすれば広い社会的視点での議論であっても、あまり心配はいりません。

今回はソーシャルデザインに関してごく簡単にお伝えしましたが、ソーシャルデザインに関しては、弊社ニューチャーネットワークスも今年本格的に力を入れて研究していきます。ご関心のある方はぜひともご連絡ください。一緒に議論しましょう。
 

 

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