大企業とスタートアップ企業によるジョイントベンチャー戦略(出島戦略)第2回
ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透
スタートアップ文化を取り入れることが成長のキー。しかし問題も多い
日本の大企業も何もしていないわけではありません。社内ベンチャー制度を導入したりCVC(Corporate Venture Capital)を設立し、スタートアップ企業に投資したりしています。しかし成功例は極めて少ないです。
社内ベンチャー制では、
- 事業計画を評価できる経営幹部が少ない、いないこと(新事業を立ち上げた役員が一人もいない会社も多い)
- 既存事業の評価尺度で判断したり、コメントしたりしてしまい、次第に方向性が曲げられること
- 大企業の賃金と待遇を保証されたままであるため主体者に危機感がなく、行動力、突破力に欠けること
- 成功してもポジションも年収も変わらずインセンティブが少ないこと
などで、なかなかうまくいかず、制度だけ残って実際誰も応募しないという会社も少なくありません。
CVCも、スタートアップ企業自体が少ない国内だけで実施しているケースや、他の大企業が投資した実績をみて横並び投資するケース、投資規模自体が小さく、数も少なく、本業に何のインパクトもないケース、CVC担当者の転勤や離職により、ノウハウが蓄積されないなどのケースが多いです。結果、経営戦略上の重要性は低く、「うちでもそれらしきものをやってはいるが・・・」「シリコンバレーに拠点をおいてCVCを始めているがいい案件はなかった・・・(話が来ない)」といった話をよく聞きます。
大企業がスタートアップ文化や企業を取り込むことの問題の本質は何なのか、いくつか考えてみました。
- 株式市場で、大企業とスタートアップでは成長性に対する期待値がそもそも大きく異なる
- 大企業の企業統治(ガバナンス)やリスクマネジメントは、スタートアップとは相容れないところが多い
- 大企業の給与や処遇では創業者や働く側のインセンティブにならず、チャレンジする人はいない
といったことが挙げられます。そうすると、大企業がスタートアップを取り込んだり、社内でスタートアップを制度のようなことやったりすること自体無理ということになります。
【参考文献】