「マクロトレンド分析は学習し続けるための刺激剤」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第30回
マクロトレンド分析はなぜ行うのか?
マクロトレンド分析とは、簡単に言えば世の中の動きです。マーケティングリサーチの中で誰もが早い段階に実施します。しかし、なぜ行うのかをあまり深く考えないまま、マクロトレンド分析が実施されていることが多いと思います。
マクロトレンド分析はなぜ行うのか?顧客経験価値を中心に考えると明確になります。感覚、感情、思考、行動、共感の顧客経験価値の5つの視点は、人や社会を取り巻く環境で大きく変わります。例えばパンデミックにより急激に景気や雇用環境が悪化した場合、ファッション商品の購入の顧客経験価値は大きく影響を受け、買い控えをするのと同時に過去買った洋服の処分や修繕などが増えるかも知れません。つまり顧客の心理、行動は、周りの環境に大きく影響を受けるのです。またマクロトレンドは、現在のことだけではなくむしろ将来の変化が重要です。将来のマクロトレンド分析とその環境下における将来の顧客経験価値の変化を予想し、自社商品やビジネスモデルに反映させなければなりません。
マクロトレンド分析は複雑でどこまでみればよいのかもわかりにくい
しかし、マクロトレンドの未来予測は、常に変化し、予想がしにくく、複雑なネットワーク構造を持ち、しかもその構造が、原因-結果の関係とは限らず、むしろ相互関係であることが多いのです。さらには、どこまで分析しても切りも終わりもありません。
つまりマクロトレンド分析とは、単にその情報を入手してちょっとした分析を行うだけではほとんど意味がなく、それで顧客経験価値がどう変わり、自社の商品やビジネスモデルにどのような機会や脅威を与えるのかを予測し、対応策を考え、行動すること、つまり「学習し続けるための刺激」と考えることに意味があるのです。
PEST分析とは
マクロトレンド分析を行う際、よく使うフレームワークがPEST分析です。
これらのマクロトレンド分析は範囲がかなり広く、何を取りあげるべきか迷うのが普通だと思います。まず企画している商品、ビジネスに関係の深いトレンドを選びます。その上で、どのくらい影響がありそうかを推測します。まずは顧客経験価値への影響度分析です。顧客経験価値の5つの視点への影響度を分析します。そしてその顧客経験価値の変化が自社の商品やビジネスモデルへ与える影響を分析します。その際、商品の売り上げ(単価×数量)、利益(売上-原価-販売管理費)と一旦分解し、それぞれにどの程度影響があるかを考えると明確になります。5%以下なら△ 10%以上なら○ 15%以上なら◎と影響度を簡単に格付けするのもよいと思います。マクロトレンド→顧客経験価値変化→商品、ビジネスへの影響の順番です。
またこれらのマクロトレンドを組み合わせて、環境変化シナリオをいくつかつくり、そのシナリオ別に顧客経験価値変化→商品、ビジネスへの影響を分析するのも効果的です。環境変化シナリオは図のように、いくつかの重要な変化要因を組み合わせて主要なシナリオを描きます。
これらのマクロトレンド分析と顧客経験価値や商品、ビジネスモデルへの影響は、予想通り当たることは少ないと考えた方が良いと思います。しかし、予測して影響度を認識しておくことは、変化が起こった際に予想とのギャップを感じ、そこから影響度をすばやく推測し直すための戦略を考えるためのガイドラインとなるのです。