顧客経験価値重視の商品企画開発を実践するトレーニング「顧客経験価値を創造できる人になる方法」第1回

顧客経験価値経済へのシフト

現代の先進国市場ではマズローの五段階欲求説でいう、生理的欲求、安全の欲求などいわゆる低次の欲求を満たすだけでは差別化できません。社会的欲求、承認の欲求、自己実現の欲求など高次の欲求に焦点を当てなければなりません。

日本、アメリカ、EUなどの先進国や中国、韓国、シンガポールなどのアジアの国々でも、社会インフラが整い、既に衣食住の水準が一定レベルを超え、フィジカルな機能をベースにしたものはコモディティ化しています。そういった社会インフラも重要ですが、経済成長の牽引役は、社会的欲求、承認の欲求、自己実現の欲求など高次の欲求を満たすもの、つまり「顧客経験価値」を主軸にした顧客経験価値経済にシフトしてきています。

従来の量的拡大を中心とした資本主義では、多額の資金を集め、大規模な生産投資を行い、多数の労働者を集めることができる大企業が中心でした。しかし今では、資金も設備も、かつてよりもそう難しくなく調達できます。日本でも多くのベンチャーキャピタルやクラウドファンディングが存在します。人材も、人材市場からの採用や派遣会社を活用すればそう難しくなく集めることができます。

またインターネットが世界の隅々まで普及し、同時にクラウド環境やスマートフォンが当たり前になった現在では、技術の面でも、個人もしくは少人数でベンチャーを立ち上げ、拡大することが可能になりました。米国Airbnb（エアビーアンドビー）やUber（ウーバー・テクノロジーズ）などは、ネット環境とベンチャーキャピタルを活用し、経験価値経済を代表するような巨大ビジネスに成長しました。

このようなことから、社会や経済が成熟し、経験価値経済にシフトする中で、テクノロジーや資金、人材が容易に調達可能な現代では、組織の大小にかかわらず個人のアイデア発想や行動力が極めて重要になります。