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構造を変える勇気 ~AIエージェントが試す経営の覚悟~

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

【このコラムの要約】

  • AIエージェントは業務効率化ではなく、経営と組織構造を変える技術である
  • 調査・判断・実行の自律化により、人前提の業務設計は限界を迎える
  • 競争軸は「AI導入」ではなく、AIエージェント前提の経営再設計に移行する
  • 日本でも実務導入は始まっており、2〜3年で生産性格差が顕在化する
  • 人月・時間課金型モデルは弱まり、成果・知的プロセス提供型が主流になる
  • 人を削減するのではなく、人を意思決定と価値創造へ移すことが重要
  • 問われるのは技術ではなく、構造を変える判断力と覚悟

■AIエージェントとは

AIエージェントとは、与えられた目標に基づき、情報収集、判断、実行、結果の報告までを、人の逐次的な指示を待たずに自律的に行うAIの仕組みです。従来の生成AIが「聞かれたことに答える存在」だったのに対し、AIエージェントは業務プロセス全体を担い、複数のツールやシステムと連携しながら継続的にタスクを遂行できる点が大きな特徴です。生成AIがすでに普及していたことに加え、「任せるだけで業務が進む」という分かりやすい価値、RPAやSaaSとの高い親和性、深刻化する人手不足が重なり、企業での導入が急速に進んでいます。

日本のAIエージェントは、最近とても身近な存在になってきています。国産では「JAPAN AI AGENT(https://japan-ai.co.jp/agent/)」が、営業や事務作業などの業務を自動化する仕組みとして注目されています。また、Salesforceの「Agentforce(https://www.salesforce.com/jp/)」やIBMの「watsonx(https://www.ibm.com/jp-ja/products/watsonx)」、Googleの「Agentspace(https://cloud.google.com/)」など、大手企業のサービスも日本で活用が進んでいます。これからは、現場で使いやすいAIエージェントが重要になると考えています。

■AIエージェントの事例

AIエージェントにはいくつかの代表的な活用パターンがあります。例えば、社内問い合わせに自動対応し、内容に応じてIT部門へ自動でエスカレーションする「タスク実行型」。広告成果を常時監視し、予算配分や入札額を自律的に調整する「業務運用型」。営業データや市場情報を分析し、次に取るべき施策を提案する「意思決定支援型」などです。いずれも人の確認を前提としながら、高い業務効率化と意思決定の質向上を実現しています。

日本でのAIエージェントの普及スピード

日本におけるAIエージェントの普及は、「認知は速く、定着はこれから」という段階にあります。生成AI自体の認知度は7割を超え、利用経験者も約4割に達していますが、日常業務に深く組み込まれている例はまだ限定的で、AIエージェントも同様です。一方で、労働力不足や業務効率化への強いニーズを背景に、今後2〜3年でAIエージェントは実用レベルの普及が一気に進むと見られています。

■AIエージェントの普及がもたらす可能性

AIエージェントは、人の判断や作業を自律的に支援・代行することで、社会の在り方そのものを変える可能性を持っています。業務では、調査、資料作成、顧客対応、タスク管理をエージェントが担い、人は意思決定や創造的な仕事に集中できます。医療・介護では、問診支援や記録作成、見守り業務を補助し、現場の負担と質の課題を同時に改善します。教育では個別最適化された学習支援が進み、行政では対話型エージェントによる手続き案内や災害対応が現実のものとなります。AIエージェントは単なる効率化ツールではなく、「人が担う役割」を再定義する存在です。

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