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コア技術を生かした革新的価値創造とは

コア技術戦略が明確になっているか③

ニューチャーネットワークス 代表取締役
高橋 透

「コア技術戦略」に求められる7つの要件

コア技術とは、将来の新事業ドメインにおいて革新的顧客価値を生み出すものであることは前述しました。しかし、革新的顧客価値を創造するには、自社の技術を生かしてモノ(製品・サービス)をつくるだけでは足りません。自社のエコシステム・ビジネスモデル全体に関わる様々な企業・組織、およびそれらから提供されるモノや情報などが不可欠です。したがって、コア技術とは、自社のモノづくりに反映されるものだけでなく、他の企業・組織との関係性や、それらとやり取りされる情報・ノウハウなどまで考慮したものであるべきです。

そこで、「コア技術戦略」に求められるものとして、以下7つの要件を挙げました。

①企業・組織独自の技術であること(独自性・差別化)
コア技術に独自性があり差別化された状態とは、コア技術そのものが技術特許で守られていることや、他社の模倣が困難であること(模倣しようとしても5年以上かかる、など)を指します。また、その独自性が顧客にとって高い魅力を持ち、それを取り入れないと顧客自身が競争上不利になることが明確である、つまりコア技術が顧客に対して強い交渉力を持つことも意味します。

例えば、GORE(ゴア)社のコア技術は、主に防水性・透湿性・防風性を両立させる「ePTFE(延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン)」の技術です。このePTFE からつくられた薄い膜状の素材「GORE‑TEX メンブレン」には1平方インチあたり約90億個の微細な孔が開いており、その孔は水滴より小さく(防水性)、水蒸気分子より大きい(透湿性)という絶妙なサイズ。同社はこのコア技術を活用して、アウトドア製品での差別化を確立しています。

②複数の製品・サービスや事業に共通するベースになっていること(複数製品・事業共通性)
コア技術の複数製品・事業共通性とは、コア技術が企業の複数の製品・事業に活用されていて、それぞれの製品・事業が競争優位に立てる状況を創出していることです。複数の製品・事業に活用されることで、技術はより強くなり、また製品の原価力も高い状態になります。

例えば、自転車や釣具で高いシェアを持つシマノのコア技術は、金属精密部品をつくる際の冷間鍛造技術です。これは全グレードの自転車やリール製品に共通する技術として活用され、高い原価力を発揮しています。

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