技術マーケティング戦略
コンセプト
技術をベースとした企業の戦略の基本は、コア技術開発とその技術による市場イノベーションと顧客提供価値の格差化にあります。その戦略の基本が曖昧になり、構造改革という名の下に、安易な短期的コストダウン、組織改革に走る企業が多く見られます。その結果長期低迷に陥り、競争が失われ、ますますの低価格、低コスト路線を余儀なくされることになります。
技術マーケティング戦略は、自社の格差化、競争優位の原点をコア技術に置きます。しかしそのコア技術開発は目先の製品・サービスを開発するのではなく、市場イノベーションを誘発するエコシステム・ビジネスモデルを企画し、自社の製品・サービスを超えた他社との連携も視野にいれた顧客提供価値を構想します。
技術マーケティング戦略の最終成果は、自社の事業ロードマップです。そのロードマップは技術ロードマップ、マーケティングロードマップ、市場ロードマップの3つで構成されるものです。
コア技術戦略は単に製品・サービスのベースになるだけでなく、アライアンス戦略、エコシステム・ビジネスモデル戦略のキーとなります。また一製品・サービスを超えた継続した顧客提供価値の創出につながるものと考えます。
技術マーケティング戦略とは、企業を、技術を基盤にした組織に造り替える、一種変革のマネジメントといえます。
視点1:自社のコア技術を再定義し、その進化発展のモデルを企画する
- 自社のコア技術を、新たな対象市場、顧客提供価値の視点から再定義する
- 自社のコア技術に顧客、アライアンスパートナー企業などからフィードバックがかかるようなビジネスモデルを設計する
- 自社のコア技術が顧客提供価値の要になるように企画する
視点2:目先の製品・サービスの企画ではなく顧客提供価値を企画する
- コア技術をベースに、製品・サービスの企画ではなく、その先の顧客提供価値を企画する
- 顧客提供価値は、顧客経験価値であり、「コト価値」であるべき。つまり顧客が継続してベネフィットを実感できるものである
- 顧客提供価値を創造するには、自社のみならず、アライアンスパートナー企業との連携も視野に入れたエコシステム・ビジネスモデルを前提にする
視点3:効果的なエコシステム・ビジネスモデルを構想するためにソーシャルイノベーションの発想を取り入れる
- IoTを前提とした社会、分野を超えた、市場は多層なレイヤーが影響し合いながら新たなエコシステム・ビジネスモデルを形成するという認識をする
- 効果的なエコシステム・ビジネスモデル戦略を構想するためには、視点を社会や大ぐくりの市場に置き、自社を外部の視点で把握することが必要。
- そのために、テーマを設定した上で、外部企業、組織とのコミュニケーション、ワークショップなどを積極的に行うことが重要
- 文字や情報に依存した論理性重視発想から「イマジネーション」「アイデア」などの直観的発想を重視する
視点4:ターゲット顧客とのコミュニケーションによる顧客提供価値の明確化
- 提案すべきターゲット顧客を戦略的視点でリストアップする
- ターゲット顧客とのコミュニケーションのための顧客ソリューション提案を企画し実施する
- 機密管理上一気に最終提案せずに、段階を踏んで(3段階)提案を行う
- 提案の結果を分析し、自社の開発すべき顧客提供価値を構想し直す
視点5:事業ロードマップも含めた技術マーケティング戦略構想書をまとめ組織を方向付ける
- 中長期の技術マーケティング戦略に関する経営トップのコンセンサスをとるために、技術マーケティング戦略構想書まとめる
- ドメインマップ、技術マーケティング戦略ビジョン、ロードマップなど経営上重要な認識の共有化を重視する
- 自社の持つ制約条件を十分に踏まえた戦略構想にする
- 中長期の戦略構想が中心ではあるが、短期の課題のブレークスルーも重視する
コンサルティングの実績
化学メーカー | 自社コア技術を起点にした事業ドメイン構想支援 |
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音響機器メーカー | 研究開発シーズをベースにしたビジネスモデル戦略 |
電子部品メーカー | 研究所シーズをベースにした事業ドメイン開発と新事業インキュベーション |
化成品メーカー | 自社コア技術をベースにした事業ドメイン&新事業開発 |
化成品メーカー | アライアンスパートナー企業との連携による新ビジネスモデル開発 |
土木エンジニアリング会社 | 自社コア技術をベースとした事業ドメイン開発&新事業開発 |
建築コンサルティング | コア技術をベースにした新事業開発戦略と開発の仕組み作り |
通信キャリア | 新事業開発のための技術開発戦略 |
書籍ご紹介
『技術マーケティング戦略』
高橋透 著(中央経済社出版)
2016/9/22発行
ISBN-10: 4502199214
ISBN-13: 978-4502199219
内容紹介
日本には現在なお製造業の各方面で、強い技術とそれを生み出す研究者、技術者、
そして技能者が多く存在しています。しかしながら、「失われた20年」などと言われるように
ここ20年以上、日本の製造業は苦しんできました。
その本質的な原因の1つは、日本の製造業のマーケティング力の弱さではないでしょうか。
製品・サービスのマーケティング力ではなく、技術のマーケティング力の弱さです。
技術のマーケティング力を強化し、継続したビジネス成果に結びつける発想、方法が必要であるという考えのもと、、
本書はできました。
多くの技術者は目の前の製品・サービスを作り出すことに注力させられ、
強い顧客提供価値やエコシステム・ビジネスモデルの創造とはほど遠い状況にある
企業が多いのでははないでしょうか。
本書が、技術をマーケティング戦略の中心に据えた、
中長期の戦略企画構想の実践手法を考えるきっかけになれば幸いです。