日中漁船問題と日米中台湾ロシア関係、北朝鮮政権交代と日韓朝中露関係など、突然のように動き出した“国際情勢”と我々のビジネスや日常の生活は、もはや切っても切れないのが昨今の現代社会です。
ますますハイブリッド化、インテグレーション化するこの現代社会において、我々が改めて振り返らなければならないことが2つあると思います。
そのひとつは“歴史的観点”であります。いうまでもなく日中問題は米中問題でもあり、それには台湾という問題も深く絡んできます。これらの複雑な問題を紐解く為のひとつの“鍵”は、歴史を振り返ることです。歴史を振り返り、今、目の前で起こっている事象に対し、その根底に流れているもの、歴史を背負った人々のさまざまな思いを理解することは、目の前の現実に振り回されず、自らの座標軸を起点とした、しっかりとした現実解釈とその先の流れを読み解くための必須条件です。
それは“歴史観”ともいいます。わたしたち一人一人が個人として、日本の歴史と相手国の歴史、そしてそれらの国際関係の歴史について、しっかりとした歴史観を持つことが、今とても求められています。
そして“歴史観”に加え重要なことは、“地政学的観点”です。21世紀になり、世界がますますネット化、ボーダレス化すればするほど国家間の地域的結びつきは強くなり、それは言い換えればお隣さんとの関係において、今まで以上に地理的つながりを意識する必要があるともいえます。
日本とお隣中国は、好むと好まざるとにかかわらず日本にとって中国は“永遠のお隣さん”であり、また中国から見ても同じことです。どちらも相手がいやだからといって引っ越すことは出来ないのです。また仏教伝来は、インド→中国→日本の鑑真和尚のルートや、インド→中国→朝鮮半島→日本のルートがあります。これらの文化的つながりも地政学的観点を無視しては語れません。
またロシアも日本の“お隣さん”です。戦前はお隣韓国・ソウルの駅でパリ行きの特急列車のチケットが買える時代もありました。近い将来パリ行きチケットが東京駅で買える時代が来るかもしれません。ネット社会の進展は、わが国・日本(人)にとって有史以来の“島国意識”の変革を迫り、そのうちにいわゆる“島国根性”を捨てなければ国際社会で生きていけない状態がくるかもしれません。
例えば今年2010年9月12日に締結された台湾―中国間のECFA(経済協力枠組み協定)は、20世紀から21世紀に向けて東アジアの歴史的・地理的大きな転換の象徴です。またこれは、大きなビジネスチャンスでもあります。昨今日本と中国の関係が歴史的転換点を迎えようとしている中、すでに台湾と中国は経済先行型でボーダレス経済体制整備を進めており、われわれ日本人が考える以上のスピードで、21世紀の構造変化が経済先導型で起こっているということです。すなわち日本のビジネスパーソンとしては、20世紀の歴史の流れからその動きを読み取り、先取りし、日本としての地政学的な立ち位置の変化に目をつけることが非常に重要となります。
今我々日本人は、大局的視点に立ち、歴史観、地政学的観点をその個人の座標軸にしっかりと組みこまなければなりません。そしてそのために価値観を共有できる信頼できる“お隣の友人”を持つことがとても大切です。
皆さんはお互いの文化的・社会的背景を尊重し、過去・現在・未来を一緒に語り合える“真の隣人・友人”をお持ちでしょうか。そしてやはり大切なことは、“お隣の友人”と未来に向かい同じ価値観を共有し、夢やVISION、ビジネスを語り合うことです。
今東アジアは20世紀冷戦時代の負の遺産の精算と、21世紀の新しい社会体制作りの幕が切って落とされました。そしてその精算過程において“眼に見えない戦争”はより一層顕在化してきております。ますます混沌とした状況下で、私たちは巨視眼を持ち、歴史と地理を学びなおし、お隣さんたちと歴史的・地政学的つながりを共有できる個人をベースとした友情、ビジネスパートナーを育もうではありませんか。それが日本の生きる道です。
更に大切な視点がありますがそれはまた機会があればお話したいと思います。
(おわり)