ニューチャーネットワークス 藤田 佳恵
2010年8月10日(火)から8月22日(日)の間、ニューチャーアジアのメンバーが中国出張に行ってきました。途中からニューチャーネットワークスやお客様企業のメンバーが加わり、最多で7名に達し、猛暑の中「今」の中国を体験してきました。
上海万博会場の様子
今回の出張は当社の地域戦略の重点である浙江省を皮切りに、杭州、紹興、上虞、蘇州、昆山、上海、大連、長春と延べ8都市を回り、30社に及ぶ企業様を訪問してきました。
黄浦江のほとりで涼む人々
南の紹興、上海一帯は連日40度の猛暑を記録しているのに対し、北の長春では高速道路の両側にコスモスがさわやかな秋風に揺れていました。
上海の夏の花
南も北も訪問する先々で熱烈な歓迎を受け、中国経済は新たな転換期に差し掛かっていることを実感しました。
「産業構造転換、ローテクから付加価値の高い技術へ企業レベルで模索中」
今回訪問した企業は、国有企業であれ、民営企業であれ、また、世界規模の大企業であれ中小企業であれ、一様に次の成長分野を模索しているところが共通しています。この背景には、従来の労働集約型の事業モデルは頭打ちになり、人件費も上がり、付加価値の高い新たな成長分野を見出さない限り、成長は減速し、強いてはマーケットからの退場も余儀なくされる危機感が背後にあります。一方、中国政府としては次の分野を奨励しています。
- 省エネ
- 環境保全
- 低炭素
- 循環経済
これらの分野に関して、米国の技術ではなく、日本の技術こそ中国の企業に求められています。この場合最先端の技術では消化しきれない恐れがありますので、少し前の技術、たとえば3-4年前の技術はちょうどいいと、銅線生産量世界一を誇る民営企業の経営者が自らの経験に基づいてコツを教えてくれました。ニューチャーアジアは訪問する先々で日本の技術に関する提案を求められました。
「製造工場、80年代日本製造現場の再現」
NHKアジア特集番組にも取り上げられた民営企業の雄、S銅業社を訪問しました。中国は世界の工場と言われて久しいですが、今回製造現場に立って、言葉ではなくその実感が初めて湧いてきました。フル稼働している巨大工場は、機械化、無人化が徹底され、5Sならぬ10Sを展開しています。80年代に訪れた多くの日本の製造現場にいる錯覚に陥り、その感動が再び蘇えってきました。
同社の凄いところはその素晴らし経営者にあります。『企業は人なり』とオーナーのKさんから何度も言われました。その言葉通りKさんは親類縁故者には不自由なく暮らせる生活基盤を与えますが、決して会社には入れません。その代り、会社の優秀な若い方には大きな舞台を用意しています。2年前に就任したCEOは重慶出身の37歳、主力工場の工場長は小学校卒の31歳。二人とも経営者としての自覚と迫力をもって、堂々と経営に励んでいます。また、同社日本法人の社長のことを1000人に一人の人材を得たとKさんは言い切り、タイの工場の経営も米国市場もすべて一任するほど権限移譲を徹底しています。
更なる成長を求めて、会社の経営を若いCEOに任せ、オーナー自身は工場から市内の商業ビルに移転した見晴しのよいオフィスで、大所高所から企業の将来の戦略策定に専念しています。
戦略策定に際しKさんは、『決して不動産を投資分野にしないこと』、そして、『決して不正をしないこと』と何度も繰り返していました。
この素晴らしい経営者Kさんからニューチャーアジアはいくつかの案件を持ちかけられています。
「安いホテルを好む、富豊層の意外な一面」
出張の初日、浙江省で地元の民営企業オーナーたち、日本で所謂富豊層を対象にツアーを企画実施している旅行社のOさんにお会いしました。富豊層に相応しく若干高級イメージの宿泊プランを提案してみたところ、意外なことばが返ってきました。なんでも海外旅行ではホテルや食事にお金をかけないのは浙江省民営企業オーナーの流儀。多にして薄利多売の商売で財をなした浙江省の民営企業のオーナーたちは、一銭も無駄にしません。家でも外国でもおかゆに漬物程度で食事を済ませている人たちに、高いホテルを勧めても敬遠されるだけだと声高に力説していました。その代わり、買い物には金額を気にせずお金を使う傾向があります、と。一方、同省の芸術家、アーティストと称する人たちは異なり、宿泊ホテルや食事に価値を見出そうとしています。中国観光客の受け入れには地域性と客層がキーワードだと感じた次第です。それぞれの地域特性と客層に合ったきめ細やかな差別化が成功に繋がる秘訣の一つでもあります。
「上海にビジネスパートナー・ネットワーク」
今回の出張の目的の一つは、上海にニューチャーアジアのパートナー・ネットワークを構築することでした。すでに中国に進出している日本企業、またはこれから進出しようとする日本企業に、中国現地において様々な専門的なサポートが受けられるようにしたいと考えております。また同時に、日本の企業に、現地で活躍している各専門分野のプロフェッショナルから、生きた中国情報をお届けできる仕組みも作りたいと考えています。
今回の出張でこの目的がほぼ達成できました。今後上海のビジネスパートナー・ネットワークを活用して、ニューチャーアジアならではのサービスを提供していきたいと思います。
(後編に続く)