News Express

 2010年12月21日

長江デルタ出張レポート(前編)
ニューチャーネットワークス 程塚 正史

 
2010年11月半ば、ニューチャーアジアは中国の長江デルタ地域に出張しました。
 
上海の浦東空港に到着した我々は、バスで一路杭州方面に向かいました。高速道路片側4車線の広い道路を、所狭しとトラックや乗用車が先を急いで走っていきます。

道路は一直線に伸びていきます。肉眼でもずっと先まで道路が続いているように見えます。そして真横には新幹線の線路が並走します。出発前、意見交換した中国政府幹部の方の言葉が思い出されます。「日本の道路は右へ左へ曲がっていますね。でも中国の道は真っ直ぐです。道を通すために必要であれば政府はその用地を買い上げることができるからです。そしてその交渉も素早くできます」。その具体例が、上海と杭州を結ぶこの高速道路です。善かれ悪しかれ、中国の経済成長の原動力を垣間見ることができます。

道路わきには巨大な看板が数百メートルおきに並んでいます。自動車の看板、電気製品の看板、ブランド品の看板などです。もちろん日本企業のものも見られます。中国の看板の多さは最近始まったことではありませんが、数百キロメートルもの区間、ほぼ絶え間なく看板が続いていることも、現代中国の商工業勃興の象徴と言えるでしょう。


「世界の工場」から「世界の市場」へ。中国がそう呼ばれ始めてもう数年が経ちます。13億人を擁し、都市部での日米欧企業による販売合戦を見るに、当然の呼称と考えていいでしょう。しかしここでいう「市場」とは、抽象的な意味でのマーケットというだけではないと、私は考えます。現在の中国は、具体的な「イチバ」としての市場の役割を持っています。

今回の出張では、進行中の弊社プロジェクトだけではなく、長江デルタ地域にある3つの巨大市場(イチバ)を視察してまいりました。その様子を報告いたします。3つの市場とは、海寧市の中国皮革城、紹興県の軽紡城、義烏市の雑貨市場です。まずはそれぞれの市場の様子をご紹介します。


初めに、海寧市の中国皮革城を視察しました。海寧市は上海市中心部から100㎞強、車で2時間弱の場所に位置します。皮革城の敷地はグラウンドや観客席を合わせた野球場よりも広い面積です。そこにある4階建ての建物、これが皮革城です。後に紹介する2つの市場もそうですが、とにかく広いです。一日ですべての店舗を見て回るのはまず不可能と思われます。

 

 *皮革城内部。長い廊下が続きます。
 
皮革城には、その名の通り、レザー、合成皮革、毛皮など、皮革製品を扱う店が並んでいます。バッグ、靴、ジャケットなど、皮物なら何でも揃っています。卸売店舗なので、都市の小売店で買うよりも安価で購入できます。もちろん価格は交渉次第です。上海から買い物に訪れる個人客も多いと、案内してくれた皮革城の方がおっしゃっていました。

*皮革城の店舗の様子。女性向け鞄を扱っています。

基本的には卸を行っており、その顧客は中国国内に留まりません。アジアはもちろん米欧から買い付けに来る顧客も増えてきているそうです。それを見越してか、昨年から改装されている建物では、建物内の廊下に「東京路」「ロンドン路」「ニューヨーク路」などの名前が付けられていました。
市場といっても、建物の外見は日本のショッピングモールのようです。卸が中心とはいえ、エンターテインメントとしてのショッピングを演出しているように感じられました。


翌日の視察先は、紹興県の軽紡城です。紹興県は、紹興酒で有名な紹興市の中にあり(中国の行政単位は、国―省―市―県―鎮の順)、市の中心部に隣接している地域です。上海を起点にすると、南西に200㎞の場所に位置します。

*軽紡城外観。1㎞建物が並んでいます。

軽紡城は、幹線道路に沿って1㎞以上続く建物群です。急速に発展したのは1990年代半ばから。合成繊維からシルクまで、生地なら何でも売っています。生地を購入し、その場で完成品をオーダーすることもできます。やはり卸なので、比較的安価に購入できます。
紹興市のある浙江省は、繊維製品の一大生産地です。たとえば日本で販売される靴下やネクタイの80%以上が浙江省で生産されていると言われています。それらの製品で使われる生地が、この軽紡城にて取引されているのです。生地は、省外からも納入されるそうです。繊維産業のまさにハブといえます。
視察に訪問したのが朝の早い時間帯だったからか、顧客よりは納入業者の姿が多く見られました。ロール状に巻いた生地を軽トラックに満載して軽紡城にやってきます。生地を次々に降ろし、エレベーターにめいっぱい乗せて、各店舗に運んでいました。

*軽紡城に納入する生地を積んだトラックの様子。

案内してくれた紹興県政府の幹部の方によると、軽紡城は政府が建物等のインフラを整備し、有利な条件で卸業者に貸出しているとのことでした。今ではまさに生地の一大集積地になっています。


最後に視察したのは、義烏市の雑貨市場です。義烏市は紹興市から南に100㎞の位置にあります。つまり海から100㎞と、貿易には適していない土地といえます。義烏市はもともと大きな産業のない寒村で、1970年代前半まで取引と言えば物々交換だったそうです。現在の雑貨市場は、その物々交換の取引所から始まりました。一次産品の交換から始まり、段々と工業品が並ぶようになっていったそうです。
市内の1㎞四方の土地にある建物が雑貨市場です。内部には5万店もの店舗が入っています。1店舗に平均3人の店員がいたとして、それだけで15万人。さらに顧客もいて食堂などもありますから、ざっと20万人近くがこの雑貨市場にいることが推察されます。日本の中規模な都市の人口くらいの人数がここに集まっているのです。

*義烏市場外観。とにかく巨大です。

取り扱っている商品は実に様々です。文房具、アクセサリー、おもちゃ、バッグ、その他日用品など、ホームセンターで売っているような品物はだいたいありそうです。そして驚くべきは安さです。たとえばサングラスが1元(120円)、メジャーも1元で売られていました。

*義烏市場内部の様子。小規模店舗が並んでいます。

中を歩いていると様々な人種の人がいます。中東の方や白人、黒人の方も見かけました。日本や韓国の方は地元の方と見分けがつきにくいことを考えると、視察した日の顧客のうち5~10%が海外から来ているようです。案内してくれた貿易会社の社長によると、売上としても大体その程度を海外が占めているのだそうです。外国への販売額で一番多いのは、中東、特にドバイとのことでした。

*義烏市場の入り口の一つ。案内がアラビア語でも書かれています。


これらの市場の特徴は、どのようなところにあるのでしょうか。後編では、中国の市場の特徴と、日本企業の関わり方について考えます。


(後編に続く)

  

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