組織革新「ブレークスループロジェクト」

ニューチャーネットワークス 山本 邦正
ニューチャーネットワークス 張 凌雲 2009年5月27日

前回までのあらすじ

原田社長の指示のもと、経営企画部の鈴木さんがブレークスループロジェクトを企画 し、実施担当のプロジェクトのリーダーが選抜されました。イタリア ン事業部の佐藤さんもその1人として、プロジェクトを実施することとなり、「カフェタイム営業を14:30~17:00の時間帯で実施する」というテーマ に対し、売上目標を9万円(客単価900円、100人)と設定しました。
今回は、佐藤さんがプロジェクトチームを編成し、実施内容の企画を立て、プロジェクト実施の承認を得るまでのお話です。

■ プロジェクトプランの作成

 佐藤さんたちがテーマと目標を設定し、PMO(Project Management Office)チームに報告して数日後、PMOチームから佐藤さんへブレークスループロジェクトの全体スケジュールとキックオフまでの準備事項が送られてきた。

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 ブレークスループロジェクトのリーダーのみなさま
皆様にはお忙しい中、各チームで取り組むテーマと目標の設定をしていただきありがとうございます。
今回取り組んでいただくブレークスループロジェクトの全体スケジュールをお送りいたしますので、ご確認下さい。

 

 キックオフを経てプロジェクトの実施が承認された翌日を1週目初日とし、10週で成果をまとめていただきます。途中の5~6週目で中間報告をして 下さい。中間報告の実施日程については、プロジェクトごとに区切りとなるタイミングが異なると思いますので、各チームより実施希望日をPMOチームまでお 知らせ下さい。また、プロジェクトの進捗については最低でも週1回はPMOチームへ報告して下さい。報告の頻度はプロジェクト進捗が順調かどうかによって 増減させます。

 キックオフに際しては、以下の①、②の準備を行なった上で臨んでいただきますようお願い致します。

① 設定していただいたテーマおよび目標を以下の3つのポイントで見直して下さい。

  • ポイント 1:3ヶ月で結果を出し、早期の成功体験を得るものであること
     小さく始めて大きく育てることを念頭におき、まずは早い段階で成果を出すことで、成功体験を得てください。その成功体験が、後々の推進力を大きなものにします。
    (目標達成までの期間を長く設定してしまうと、プロジェクトに取組むモチベーションの維持が難しく、目標達成の可能性が見えにくいことへの不安から推進力が落ちてしまいます)
  • ポイント 2:従来の取組とは異なる考え方・やり方での取組であること
     これまでの商習慣や前例などの既成概念にとらわれず、それらの前提を取り払ったゼロベースの考え方・やり方で取組を企画してみてください。それにより、今まで思いつかなかったことが見え、変革の第一歩となります。
    (これまでの延長で行う取組は、若干の改善にはなっても大きな変革にはつながりません)
  • ポイント 3:誰にも解るテーマであり、現場の行動へ結びつく目標であること
     プロジェクトを進めていく上で、現時点でどれくらい目標とのギャップがあるかを把握し、目標達成のためにどのように行動していくかを常に考えるためには成果を測ることができる目標でなくてはいけません。
    (そのような目標設定をしないと、プロジェクトの成果を評価することができませんし、取り組んだメンバーも、ただやっただけという結果になりかねません)

② 設定したテーマ・目標を達成するための具体的な実施内容・体制およびスケジュールをまとめた上で発表に臨んでください。

不明点があればPMOチーム鈴木までご相談下さい。
お忙しいとは思いますが、何卒よろしくお願い致します。

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佐藤さんは、設定したテーマおよび目標が3つのポイントを満たしていることを確認し、早速具体的な実施内容、体制、スケジュールを作成することにし た。議論に際しては、テーマと目標を議論したときと同様、表参道店のホールスタッフやキッチンスタッフ、正社員やパートなど様々な立場のメンバーを集めた。

表参道店プロジェクトチームメンバー

  佐藤さん・・・イタリアン事業部に所属。プロジェクトチームのチームリーダー。アルバイト時代からA社に在籍する現場たたき上げ
  酒井さん・・・ホールスタッフのリーダー
  大久保さん・・・キッチンスタッフのリーダー
  本多さん・・・ホールスタッフ。表参道店でアルバイト歴5年のベテラン
  榊原さん・・・キッチンスタッフ。デザート担当

議論の進め方については、PMOチームの鈴木さんに教えてもらった以下のポイントを意識して実施するようにした。

  • プロジェクトを始めるに当たり、リーダーとメンバーで、プロジェクトを通じてどのように現状を変えていきたいかというビジョンを共有し、みな同じ目的に向かってプロジェクトを進めて行くという意識づくりをする。
  • 様々なバックグラウンド、立場のメンバーを集め、議論の際にはその垣根を越えて、お互い対等な立場で建設的な議論を行なう。
  • アイデアを検討する際には、1人ずつ順番に、小出しにアイデアを発表するのではなく、付箋紙などを使って全員一斉に出して共有する。例えばアイデアを5分 間で1人10個出すなど多めな目標を設定してそれぞれがアイデアを出し切る。(5個くらいまではこれまでの経験などですぐに出てきます。7~8個くらいま ではなんとか出せます。しかし、10個くらいになると視点や発想を変えないとなかなか出てこないものです)
  • アイデアを出し切ったら、似たようなアイデアを5~7つにグルーピングし、グループを一言で表すタイトルを付ける。それらのタイトルを、縦軸が効果、横軸が難易度のマトリックス上で整理し優先順位をつけて、取り組みの是非、取り組む順番を決定する。

 

  • 取組を決定したアイデアについて、優先順位にそって具体的な計画を立てる。その際は、誰が、何を、いつまでに、どれくらい(具体的な達成目標)やるかを明確に決める。

検討の結果、下記のような内容でプロジェクトに取り組むこととした。

表参道店プロジェクトチームでの検討内容結果

取組テーマ :「カフェタイム営業を14:30~17:00の時間帯で実施」
目標 :売上目標一日あたり9万円、(客単価900円、100人)
実施体制 :表参道店 佐藤(リーダー)、酒井、本多(ホール)、大久保、榊原(キッチン)
実施内容 :
 • 現在実施していないカフェタイム営業を行ない、売上のアップを図る。
 • カフェタイム営業は、ランチで出しているスイーツの評判が良いことから、スイーツを主軸としたメニューとする。
 • ターゲットは、20代後半~40代の女性
実施スケジュール :
 1週目・・・提供メニューの企画および試作
 2週目・・・提供メニューの決定、集客方法の検討
 3週目・・・カフェタイムのメニューをランチで試験的に提供し意見収集
 4週目・・・カフェタイム営業のシミュレーション
 5週目・・・シミュレーション結果を基にした改善と中間報告
 6~10週目・・・カフェタイム営業スタート
※中間報告はカフェタイム営業のスタート準備が整った上で実施

■ キックオフでの発表

 PMOチームの鈴木さんの司会でいよいよキックオフが開会した。

 「みなさま、お忙しい中、お集まり頂きましてありがとうございます。本日までに各チームにはプロジェクトのテーマ、目標、具体的取組内容、実施計画をま とめて頂いております。その内容を原田社長はじめ、各事業部長に発表して頂き、プロジェクトを進めて良いか否かを意思決定して頂きます。プロジェクトを進 める承認が得られたチームは、早速明日よりプロジェクトを進めて頂くこととなります。一方、承認が得られなかったチームは、指摘事項を修正した上で、後日 再度発表のうえ、プロジェクトを進める承認を得て頂くこととなります。よろしくお願いします。」

原田社長の挨拶のあと、最初のチームの発表が始まった。内容がとてもよく、確認事項をいくつかやりとりするだけで実施の承認が得られたチーム、いろいろな質問を受け、検討の不十分さが目立ち再検討となったチームなど、次々にほかのチームが発表をしていった。

 「(うちのチームで検討した内容で承認を得ることができるだろうか・・・。)」

 緊張と不安が高まる中、佐藤さんのチームの順番がやってきた。事前にチームメンバーと検討して作成した取組テーマ、目標、実施内容、スケジュールを発表し、質疑の時間に入った。
まず、原田社長からは、

「発表いただいた取組は、これまでどの店舗でも実施していない全く新しい取組であり、テーマとしてとてもすばらしい。」

 と、評価してもらった。
また、原田社長をはじめ各事業部のトップの方から、次のような指摘を受けた。

「斬新なテーマ設定なのだが、テーマ名のインパクトが低いと思う。メンバー以外にも覚えてもらえるような印象に残るテーマ名を設定してほしい。さらにテーマ名は、リーダーである佐藤さんのビジョンが埋め込まれたものにしてほしい。」

「ストレッチな目標が設定できている点はよいが、もっと具体的に目標を絞るべき。」

「準備期間をもっと短くし、実際にカフェタイム営業をして売上をつくる期間を増やすべきでは?短期間で成果を上げるためには、発生した課題をすぐに修正して反映させるということを、実際に動いて店舗運営しながら、スピーディーに繰り返し行なうべき。」

「エリアの顧客・競合分析が甘い。メンバーにマーケティング担当者を加える必要があるのではないか?」

「実施計画がラフすぎる。誰が何をいつまでにやるのか、もっと個人レベルまで落とし込む必要がある。」

「プロジェクトの達成目標以外に、個人および組織の達成目標を定義すること。」

これらの指摘を受けたため、結果としては実施の承認を得ることができず、5日後に再度発表することとなった。佐藤さんたちは早速プロジェクトの取組内容を再検討し、下記のようにまとめた。

 

 

※個人別の目標・スケジュールについては、スペースの都合により、次回掲載いたします。

 再検討した内容で再び原田社長をはじめ各事業部のトップの方に対して発表を行ない、無事に実施の承認を得ることができた。

 いよいよ明日からプロジェクトがスタートだ。

(第3話へ続く)

 

次回のあらすじ

  再発表ののち、プロジェクトを進める承認を得ることができた佐藤さんのチーム。しかし、ほっとしたのも束の間、実際にプロジェクトを進めてみると想定外の事態が発生!
佐藤さんのチームは、その難局を乗り切り、無事プロジェクトを進めていくことができるのか?!

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