デジタルB2Bマーケティング 第7回:B2Bで新たな市場(文脈)を見つけるには

Share

デジタルB2Bマーケティング 第7回B2Bで新たな市場(文脈)を見つけるには

■異なる市場から自社を眺める

既存のB2Bビジネスで新市場を見つけるためには、自社のコア技術、コアコンピタンスが適応でき、新たな文脈を探すことが必要です。文脈とは人や社会に対する新しい意味であり、フィジカルなソリューションを伴ってはいますが、より高次なレベルでの満足感、その多くが生活スタイル、働き方などの文化を意味します。

ではどのようにして新市場、つまり新文脈を見つけるのでしょうか?簡単に言えば自社のコア技術、コアコンピタンスを、今事業をやっていない新市場から眺めてみることです。自社を新たな市場の顧客企業の視点から評価してみて何ができるかを想像してみることです。

新事業開発で失敗する企業・組織は、自己認識に誤りがあります。自社のコア技術やコアコンピタンスを、既存市場、既存顧客からだけ見てその延長線上で考えてしまうのです。

自動車部品での素材、部材の企業のコア技術、コアコンピタンスは、自動車業界で定義づけられたものであり、絶対的なものではありません。食品は食品業界で、半導体は半導体業界で定義づけられたコア技術、コアコンピタンスなのです。

これはちょうど、自分と周りの環境との関係と同じです。中学時代の友達の中の私と、大学、そしてメーカー時代、コンサルタント時代の私では、ある部分で一貫したものはありますが、私のコアコンピタンスの定義はそれぞれ異なります。

もし自動車部品業界の企業が、新市場に新たなビジネス、新たな文脈を構築しようとするならば、例えば住宅市場から見てみるとか、オフィス市場かから見てみるなどです。どうでしょうか。たくさん可能性が出てくるはずです。

■既存市場から離れるためには“体験”が効果的

しかし現実は既存市場からの自己定義から離れられません。まるで中学、高校時代の自分への評価を気にしている学生のようにです。

何を話しても、考えても無意識に自動車業界を前提とした発想、思考になりがちです。上司も役員も同じで、誰もそのことにすら気づかないことも多いのです。
そこで私がよくお勧めする方法が、新しい市場のビジネスの経験を少し長い間経験することです。私が進めるプロジェクトでは、新たな発想を持ち込み、文脈をつくりたい業界の会社で長期間働いてもらうことがあります。

例えば、クルマ部品メーカーが住宅関連で何か新しいビジネスを行いたければ、ハウスメーカーの展示場で少なくとも一か月ぐらい働いてみるといったことです。1週間、2週間、早い人で3週間目あたりから、クルマ業界の人から住宅業界の人にすっかり変わっています。そこではじめて新たな市場である住宅市場から自社のコア技術、コアコンピタンスの再定義がなされ、そこから本業のクルマ部品の利用、活用、応用を想像してみることができるのです。

つまり自社のコア技術、コアコンピタンスとは絶対的なものではなく、市場と対峙した場合に志向される相対的なものなのです。その認識が重要です。

■ユーザーイノベーションを誘発する製品・サービスの形態にし、そこから得たデータで自己の再定義をする

新文脈、新市場かたら見た自社のコア技術、コアコンピタンスの再定義とは、つまりユーザーイノベーションなのだと思います。そうであれば素材や部材をある業界に特化した形に完成させるのではなく、あえて要望に応じてカスタム化する状態にして、ユーザーイノベーションを誘発する製品・サービス形態にする戦略が考えられます。

そのユーザーイノベーションのデータを文字、画像、数値など可能な限り入手でき、AI(人工知能)で解析すれば、さらに新しいコア技術、コアコンピタンスの再定義がなされ、事業の発展が見えてくるのではないかと思います。

ただし、その場合AIが分析したデータを現実の文脈に合わせて企画するのはまだ人間の仕事であるという認識を忘れないことが重要です。しかしAIの解析結果は重要なインサイトを与えてくれるに違いありません。

 

★ニューチャーネットワークスコラムサイト「Global Age
★ニューチャーネットワークスでは月2回メールマガジン「グローバル・エイジ」を刊行しております。
「グローバル・エイジ」の登録はこちら
★ニューチャーネットワークスへのお問い合わせはこちら

☆書籍のご案内『デジタル異業種連携戦略』
高橋透 著(中央経済社出版)

戦略・開発部門,アライアンス,ジョイントベンチャーの担当者必読!!
優れた経営資産を他社と組み合わせ,新たな事業を創造する

現在,日本企業の多くは,既存製品・サービスの性能向上やコストダウンに注力していますが,こうしたビジネス展開はすでに行き詰まっています。顧客からの要求は果てしなく,要求に応え続けることで組織の疲弊を招き,自社を限界へと導くからです。このような現状からの方向転換を図るのが「デジタル異業種連携戦略」です。
IoTやAIなどのデジタルテクノロジーを活用し,自社が持つ優れた経営資産を異業種の経営資産と組み合わせることで,これまで関わりのなかった新市場や新規事業への参入を可能にします。
本書では,デジタル異業種連携を実現するための戦略の立て方とその実践方法を具体的に解説します。

デジタル異業種連携戦略

2019/11/13発行
定 価:3,520円(税込)
ISBN-10: 4502318515
ISBN-13: 978-4502318511

【関連コラム】

vol.181 デジタルB2Bマーケティング 第6回:B2Bビジネスで新文脈をみつけることとは
vol.180 デジタルB2Bマーケティング 第5回:モジュール化戦略を素材、部材に適応する
vol.179 デジタルB2Bマーケティング 第4回:素材や部材の経験価値
vol.178 デジタルB2Bマーケティング 第3回:製品・サービスのデジタル価値を考えているか?
vol.177 デジタルB2Bマーケティング 第2回:B2Bビジネスの危機感
vol.176 デジタルB2Bマーケティング 第1回:製品特性によって異なるB2Bマーケティング
vol.164 商品企画開発は誰の仕事か?むしろあいまいな位置づけでよい
vol.162 商品開発にとってなぜビジネスモデルが重要なのか?
vol.161 「商品」の定義がまちがっていないか?
vol.158 情報やサービスが商品開発に組み込まれているか
vol.157 なぜわが社は顧客の価値観変化についていけないのだろうか?
vol.141 新価値創造のためのデジタル異業種連携戦略とは
vol.137 これでいいのか?日本企業の新規事業の取り組み方
vol.135 デジタル時代の既存の大企業の強みとは
vol.129 いまもっとも効果的な新事業開発法は何か
vol.121 異業種連携を仕掛ける企業や人が社会をリードする
vol.114 「異業種連携による新規事業開発」アイデア出しまでは進めても事業化は簡単ではない
vol.103 「挑戦すること」は重要な経営資産だ! ~大企業が新事業で成功するための考え方と方策~
vol.96 技術マーケティング戦略によるオープンイノベーション
vol.93 会社や組織のやり方に納得していない技術者へ贈る「技術マーケティング戦略」
vol.76 技術マーケティング戦略(2)
vol.75 技術マーケティング戦略(1)
vol.72 技術マーケティング戦略のための真の技術経営人材育成
vol.70 サービス化する技術
vol.69 既存技術での異業種市場参入
vol.65 IoT(Internet of Things)時代にこそ技術の原点に戻って考えること
vol.64 技術のゴールは製品ではなく価値にあり

【ニューチャーの関連商品】

〇コンサルティングサービス
オープン・イノベーション戦略
技術マーケティング戦略
新製品・新事業戦略
組織横断(クロスファンクショナル)プロジェクト
M&A・アライアンス戦略

その他のコンサルティングサービスはこちら

〇研修
オープン・イノベーション戦略
異業種ビジネスリーダー研修
新製品・新事業開発戦略研修
対象ユーザー参加型「新製品・新事業開発プログラム」

その他の研修はこちら

〇書籍

『技術マーケティング戦略』

『技術マーケティング戦略』
高橋透 著(中央経済社出版)
2016/9/22発行
ISBN-10: 4502199214
ISBN-13: 978-4502199219

『勝ち抜く戦略実践のための競合分析手法』

『勝ち抜く戦略実践のための競合分析手法』
「エコシステム・ビジネスモデル」「バリューチェーン」「製品・サービス」
3階層連動の分析により、勝利を導く戦略を編み出す!
高橋 透著
定価:3,672円(税込) 
発行日:2015年1月20日
A5判/320頁
ISBN:978-4-502-12521-8

『90日で絶対目標達成するリーダーになる方法』
プロジェクトのゴールは90日で設定すべし!
高橋透 著
定価:1,512円(税込)
発行日:2014年2月28日
ISBN:9784797376098

Share

Tags: , , ,