デジタルB2Bマーケティング 第4回:素材や部材の経験価値

Share

第4回:素材や部材の経験価値

■顧客経験価値や意味のイノベーションを理解する

エクスペリエンス(日本ではなぜか「経験価値」と訳されてしまった・・)という重要なキーワードがあります。人は製品やサービスを購入しているのではなく、それがもたらす経験、体験を購入しているのだという考えです。顧客はクルマを購入するのではなく、楽しい移動を購入しするのだし、旅行を購入するのではなく、出会いや発見を購入しているという考えです。その背景には、人はそれぞれ、言葉にはならないかもしれないけれども、最終的に自己実現したい何かがあり、そのために行動し、感じ、感情を持ち、共感し、仲間を作っていくものだという考えがあります。

顧客経験価値とは、その感覚、感情、思考、行動、共感といった人が体験するコンテクストの重要性を重視しています。ミラノ工科大のロベルト・ベルガンティ教授は、それを「意味のイノベーション」と呼びました。成熟した市場で大きく需要を創造していくには、顧客経験価値や意味のイノベーションを深く理解していなければなりません。

■素材、部材における顧客経験価値、意味のイノベーション

顧客経験価値や意味のイノベーションは、サービスビジネスや消費財の完成品が主に考えるべきことと思われがちですが、最もインパクトを与えることができるのは素材、部材の顧客経験価値や意味のイノベーションです。例えば、「温度や光で色が変わるスチール素材」を開発すれば、自動車のボディ、住宅のサイディング屋根、スチール家具や机、缶、家電の筐体など様々な製品そのものの顧客経験価値や意味のイノベーションを変え、新たなストーリーを創造することができます。同じように人の肌に優しい柔らかいフィルムスチール、手で形を自由に変えられ、スイッチを入れれば固く強くなるスチールなどなど、素材の特性を変えるだけで、エンドユーザーは、顧客経験価値や意味のイノベーションを実現できるのです。素材や部材は、複数の産業に利用されるため、そのインパクトは大きくなります。ユニクロのヒートテックも東レとの共同開発で生まれロングヒットになっているし、高級アウトドアウェアに使われているゴアテックスも同様です。

このように人間が素材、部材に対する五感、感情そしてエクスペリエンスがこれまでにないものであれば、全く新しい世界が広がる可能性があります。

■素材、部材開発は、顧客経験価値や意味のイノベーションから入るべき

これから社会、経済に大きなインパクトを与える素材、部材を開発したい研究者は、その技術特性を知ることも確かに大事ですが、それよりもどんな顧客経験価値や意味のイノベーションを創造できるかを考えることが重視されると思います。言語化しにくい異質な感覚を自分の中に確かめ、深堀する感覚とイマジネーション力が求められます。また人の感覚とそこから生まれる感情や思考、さらには人間のもつ思想、信条みたいなものに関する知見も磨き、それと素材、部材の関係を考えることも求められます。

そういった一見「変わった経験」をどこで身に着け、社内や研究所内で表現するのかも問題です。そういった人は、会社では「変人扱い」されることもあるかと思います。これからはそういった独自の意味を自分の中で持っている研究者が、顧客経験価値や意味のイノベーションを創造していくのだと思います。

 

 

★ニューチャーネットワークスコラムサイト「Global Age
★ニューチャーネットワークスでは月2回メールマガジン「グローバル・エイジ」を刊行しております。
「グローバル・エイジ」の登録はこちら
★ニューチャーネットワークスへのお問い合わせはこちら

☆書籍のご案内『デジタル異業種連携戦略』
高橋透 著(中央経済社出版)

戦略・開発部門,アライアンス,ジョイントベンチャーの担当者必読!!
優れた経営資産を他社と組み合わせ,新たな事業を創造する

現在,日本企業の多くは,既存製品・サービスの性能向上やコストダウンに注力していますが,こうしたビジネス展開はすでに行き詰まっています。顧客からの要求は果てしなく,要求に応え続けることで組織の疲弊を招き,自社を限界へと導くからです。このような現状からの方向転換を図るのが「デジタル異業種連携戦略」です。
IoTやAIなどのデジタルテクノロジーを活用し,自社が持つ優れた経営資産を異業種の経営資産と組み合わせることで,これまで関わりのなかった新市場や新規事業への参入を可能にします。
本書では,デジタル異業種連携を実現するための戦略の立て方とその実践方法を具体的に解説します。

デジタル異業種連携戦略

2019/11/13発行
定 価:3,520円(税込)
ISBN-10: 4502318515
ISBN-13: 978-4502318511

【関連コラム】

vol.178 デジタルB2Bマーケティング 第3回:製品・サービスのデジタル価値を考えているか?
vol.177 デジタルB2Bマーケティング 第2回:B2Bビジネスの危機感
vol.176 デジタルB2Bマーケティング 第1回:製品特性によって異なるB2Bマーケティング
vol.164 商品企画開発は誰の仕事か?むしろあいまいな位置づけでよい
vol.162 商品開発にとってなぜビジネスモデルが重要なのか?
vol.161 「商品」の定義がまちがっていないか?
vol.158 情報やサービスが商品開発に組み込まれているか
vol.157 なぜわが社は顧客の価値観変化についていけないのだろうか?
vol.141 新価値創造のためのデジタル異業種連携戦略とは
vol.137 これでいいのか?日本企業の新規事業の取り組み方
vol.135 デジタル時代の既存の大企業の強みとは
vol.129 いまもっとも効果的な新事業開発法は何か
vol.121 異業種連携を仕掛ける企業や人が社会をリードする
vol.114 「異業種連携による新規事業開発」アイデア出しまでは進めても事業化は簡単ではない
vol.103 「挑戦すること」は重要な経営資産だ! ~大企業が新事業で成功するための考え方と方策~
vol.96 技術マーケティング戦略によるオープンイノベーション
vol.93 会社や組織のやり方に納得していない技術者へ贈る「技術マーケティング戦略」
vol.76 技術マーケティング戦略(2)
vol.75 技術マーケティング戦略(1)
vol.72 技術マーケティング戦略のための真の技術経営人材育成
vol.70 サービス化する技術
vol.69 既存技術での異業種市場参入
vol.65 IoT(Internet of Things)時代にこそ技術の原点に戻って考えること
vol.64 技術のゴールは製品ではなく価値にあり

【ニューチャーの関連商品】

〇コンサルティングサービス
オープン・イノベーション戦略
技術マーケティング戦略
新製品・新事業戦略
組織横断(クロスファンクショナル)プロジェクト
M&A・アライアンス戦略

その他のコンサルティングサービスはこちら

〇研修
オープン・イノベーション戦略
異業種ビジネスリーダー研修
新製品・新事業開発戦略研修
対象ユーザー参加型「新製品・新事業開発プログラム」

その他の研修はこちら

〇書籍

『技術マーケティング戦略』

『技術マーケティング戦略』
高橋透 著(中央経済社出版)
2016/9/22発行
ISBN-10: 4502199214
ISBN-13: 978-4502199219

『勝ち抜く戦略実践のための競合分析手法』

『勝ち抜く戦略実践のための競合分析手法』
「エコシステム・ビジネスモデル」「バリューチェーン」「製品・サービス」
3階層連動の分析により、勝利を導く戦略を編み出す!
高橋 透著
定価:3,672円(税込) 
発行日:2015年1月20日
A5判/320頁
ISBN:978-4-502-12521-8

『90日で絶対目標達成するリーダーになる方法』
プロジェクトのゴールは90日で設定すべし!
高橋透 著
定価:1,512円(税込)
発行日:2014年2月28日
ISBN:9784797376098

 

Share

Tags: , , ,